ホンダはマジメだった 800万円超の新型CR-Vに迫る
ホンダがFCEVを作り続けるワケ
もっとも、値段の高さはほかのFCEVと変わらず、希望小売価格は¥8,094,900もする。しかも、売切りはせず、リース販売のみになるという。ただし、CR-V e:FCEVは国から¥2,500,000近い補助金が支給されるので、実質的な価格は¥5,500,000ほどと捉えることもできる。これは、トヨタの「クラウン・スポーツPHEV」の実質¥7,000,000(車両価格は¥7,650,000、補助金¥550,000)と比べても割安な設定。ちなみに全長の比較でいうと、CR-V e:FCEVの全長はクラウン・スポーツPHEVよりも8cmほど長い。つまり、2台はほぼ同じクラスと考えられるのだ。 それにしても、ここまで販売台数が伸びなかったFCEVを、なぜ、ホンダは作り続けるのだろうか? 最大の理由は、先ほども記したとおり、FCEVが超クリーンな自動車であることにあるはず。そしてもうひとつ、FCEVと同じようにCO2を排出しない自動車の代表格である電気自動車(BEV)と違って、エネルギーの補給に必要な時間が3~5分と極めて短いことにある。 これと関連して、FCEVが大型車や長距離移動車にとって都合がいい点も、ホンダがFCEVを作る理由のひとつだ。なにしろ大型車や長距離移動車をBEVで作ろうとすると大量なバッテリーを搭載しなければならず、その重量があまりに重くなって間尺に合わなくなる恐れがある。しかし、同じ出力、同じ航続距離の動力源であれば、一般的にいってBEVよりもFCEVのほうが軽く作りやすいので、燃料電池は大型車や長距離移動車に適しているとされる。 事実、ホンダはすでにいすゞと協力して燃料電池大型トラックの公道実証走行を1年ほど前に始めている。つまり、ホンダは自分たちで大型トラックを作るのではなく、燃料電池部分をトラックメーカーに供給することで、自動車界のカーボンニュートラル化に貢献しようとしているのだ。 そのほかにも建設機械や定置用発電機に燃料電池を使うアイデアもあり、ホンダはこれらの分野にも積極的に展開していく意向を示している。そうした、様々な分野で使いやすく、また価格の面でも実用性が高い燃料電池を生み出すことを目的として、ホンダは燃料電池車の開発に取り組んでいるのである。 なお、ホンダはアメリカのGM(ゼネラル・モータース)と長年にわたり燃料電池を共同開発してきたが、先ごろ両社は燃料電池システムを生産する合弁会社をアメリカ・ミシガン州に設立。CR-V e:FCEVに搭載される燃料電池もここで生産されたもので、設計などを工夫することでその生産コストは従来の1/3に抑えられたそうだ。 個人的には、CR-V e:FCEVの乗り味がとても気に入ったし、BEVと違ってエネルギーの補給が3~5分で済むところも魅力的。水素一充填で走行できる距離も600kmを超えるなど実用性は高いので、水素ステーション網が充実してきたら真剣に購入を検討しようかと思っている。あとは、日本でクリーンな水素が生産されるようになることを祈るばかりだ。
文・大谷達也 写真・小塚大樹 編集・稲垣邦康(GQ)