仏版『地球の歩き方』未掲載の穴場!レ・サーブル=ドロンヌがフランス国内で人気の理由
命を懸ける覚悟があるから不安も緊張もない
「緊張はしません。もう世界一周は今回で5回目。 家族は、大阪出張に送り出すくらいの感覚です。 でも、ヴァンデ・グローブは毎日何か起こる。想定内も想定外もありません。 想定外なことばかり起きる、それが想定内とでも言えばいいでしょうか。 命を懸ける覚悟があるから、不安も緊張もないのかもしれません。 それと、どんな時も、僕は“良き日本人”でいることを心がけています。 礼儀正しく、時間は守る。 フランスはいい意味でも悪い意味でも時間に縛られないお国柄。それでも僕は、たとえ相手が時間にルーズだとしても、時間も礼儀も守る。それが自分らしく、良き日本人でいることだと思っています。こういうことって、案外と大事なことなんです。 5回目となる世界一周レース。ヴァンデ・グローブは3回目ですが、毎回違う目標を立てます。 最初の目標は、とにかく『レースに出る』ことでした。初めて参加するまでに30年かかった。中古のヨットを手に入れて、スポンサーを探して……。結局そのレースでは、マストが折れて、スタートから1カ月でリタイアせざるを得なかった。 それで2回目の時は、「日本人初完走」を目指しました。結果、日本人として、アジア人としても、初の完走となりました。結果は16位です。 だから今回は、8位以内に入る目標を立てた。もっと早く走る。スピードをあげたい。そのための準備も整いました。
自分のためだけなら、最新最高の船でなくてもいい
本当は、こんな最新で最高の船じゃなくてもいいんです。 でも最新で最高の船に乗らないと、今後につながるノウハウが蓄積できない。 だから老体に鞭打って、最新式の羽根つきに乗ります。僕がノウハウを蓄えていかないとなりませんから。 と言って、若い人たちに、自分のやり方を教えなくちゃ、なんて思わないし、教えられるものでもありません。 若い人には、ただ場を、チャンスを与えられたらと思っています」 今回が10回目のヴァンデ・グローブは11月10日にスタートした。参加者には6人の女性がいて、うちふたりはママさんで、さらにうち一人は夫婦ともにスキッパーで、それぞれがもちろん別々の船での出帆である。 また白石さんが停船していた隣には、白石さんの本を読んで白石さんに憧れ、厳しい参加権を勝ち取った右手を持たない中国人スキッパーがいた。 白石さんの作ってきた道は、確かに次のアジア人へとつながっているのだ。 42人の参加者は、事前予選で40人に絞られた。この40人全員が一斉にスタートを切ったヨットレース。女性も男性も、障害も年齢も、前歴も初参加も関係ない。「誰もが平等」が、フランス人を惹きつけるヴァンデ・グローブの精神なのだ。 ◇レ・サーブル=ドロンヌの魅力は、4年に一度だけのヴァンデグローブにとどまらない。 後編「美食のレストラン、世界一のチョコレート…知られざるフランスの”世界の美しい湾”のある場所」では、世界一過酷なヨット大会以外でも行ってみたい、レ・サーブル=ドロンヌの魅力をお伝えする。 協力 ヴァンデ県観光局 レ・サーブル・ドロンヌ観光局 フランス観光開発機構 ヴァンデ・グローブ
FRaU編集部、風間 詩織