【ABC特集】津波直前の最後のメールに“帰りたい” 最愛の妻を必ずこの手で…再会を信じ10年間海に潜り続ける男性
津波が襲う直前に祐子さんから送られたメール
そして高松さんにはもう1つ、心の支えがあります。 震災後に見つかった祐子さんの携帯電話。唯一、高松さんの手に戻ってきた“妻の生きていた証”です。 (高松さん)「従業員の通用門のあるところが駐車場になっているんですけど、(震災から1ヵ月後に)そこから見つかりました。流されてなかったんですよ、すぐ下にあって不思議なことに」 そこに残る、高松さん宛てのメールには「大丈夫?帰りたい」とありました。送信時刻は15時21分。津波が押し寄せる直前に銀行の屋上から祐子さんが送ったメッセージです。
そして、その4分後には「津波凄い」というメッセージが。 (高松さん)「(屋上の)垂直の鉄のはしごをのぼっていったんだろうなって。怖がりだったのに、必死だったんでしょうね。波に、水に追われてという感じなのかな…」 (記者)「それを思うとお辛い気持ちに?」 (高松さん)「そうですね、どんな気持ちでのぼって行ったのかと思うと…」
10年で潜水回数は670回を超えた
ことし2月末、高松さんの姿は町のダイビングショップにありました。潜水を前に、一緒にもぐるダイバーと捜索場所を確認します。 (高松さん)「(震災から)10年以上経ちますので、だんだん難しくなっているんだなというのは実感としてありますよね。実際に自分の目で見ているので」 (記者)「潜ることに意味があるというか?」 (高松さん)「そうですね。何て言いますかね。妻に会いに行っているような感じもありますしね」
震災当時54歳だった高松さんは、67歳になりました。この日も高松さんは、祐子さんに会いに極寒の海へ… (高松さん)「このまま冷たい海でというのも、かわいそうですし。ただただ早く見つけてやりたい」
「妻に会いたい」――― しかし、その思いとは裏腹に、年々泥が堆積するなど捜索は時間が経つにつれ、厳しくなっていきます。それでも高松さんは… 「やっぱり、最後のメールに『帰りたい』という一言があったので、まだ帰りたがっているだろうなと」 祐子さんを自分で迎えに行くと決めた高松さん。海に潜った回数は、10年間で670回を超えました。
(高松さん)「運命と言ってしまったらそれまでだけど…なんで女川なんだろうって。どこにいるものやら・・・」 震災から13年。高松康雄さんは今も、妻・祐子さんとの再会を待ち望んでいます。 (『newsおかえり』2024年3月11日放送分より)
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