【ABC特集】津波直前の最後のメールに“帰りたい” 最愛の妻を必ずこの手で…再会を信じ10年間海に潜り続ける男性
「妻を迎えに行きたい」自らの手で捜索を決意
(海上保安部の職員)「七十七銀行関係者の要望により、再度、水中捜索を行います」 今から11年前、女川町で行われた宮城海上保安部による行方不明者の捜索。そこに、高松(当時56歳)さんの姿がありました。 (高松さん)「ここまで来たら、無事ってことはないと思うので、であればせめて・・・遺骨の1部でも連れて帰りたい」
捜索を見守り続ける日々…。 月日が経ち、町の景色が少しずつ変わり始めてきた頃、高松さんにある思いが芽生え始めます。 「人任せにしておくのもちょっとなと思って。やっぱり自分でも潜らないとなと、迎えに行きたいと思って」
危険を伴う海底の捜索。仕事や家事の合間をぬって、高松さんは毎日懸命に勉強してきました。 そして、2014年2月、潜水士の国家資格を取得したのです。
(ダイバー・高橋正祥さん)「あそこから入ったほうが近いかなと思います。隣はがれきを撤去した場所なんで」 沖に出て、初めてのトレーニング。この日の水温は6度。重さ25キロを超える装備を背負い、指導役のダイバーと海に潜ります。
(高松さん)「下手下手、全然だめですね」 それでも、必ずこの手で見つけるという思いが高松さんを突き動かします。妻を奪った海、いったいどこにいるのか… (高松さん)「早く出てきてくださいと、一緒に帰りましょうと」
妻を奪った海に何度も潜り続けた
その後も、何百回も海に潜り続けた高松さん。捜索では、行方不明者の物と思われる免許証や写真、衣類など、数々の遺留品が見つかりました。しかし、祐子さんの手がかりとなるものはありませんでした。
そんな中、震災から5年経った2016年。高松さんに希望のニュースが飛び込んできました。石巻市の行方不明者の遺骨が、約10キロ離れた女川町で発見され、遺族の元へ返されたのです。 (高松さん)「やっぱりこういう事もあるんだなと思って、もしかしたら(妻の遺骨が)あがるかもしれないし、偶然でも捜し続けておかないとないことなんで、捜し続けるのが大切なのかなと思っています」
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