“日本モデル”政府のコロナ対応を検証「民間臨調」が報告書
新型コロナウイルス感染症への日本政府の対応などを民間の立場で検証してきた「新型コロナ対応・民間臨時調査会」(委員長=小林喜光・三菱ケミカルホールディングス取締役会長)が、報告書をまとめた。安倍晋三前首相や菅義偉首相、コロナ対応を担う西村康稔経済再生相ら政治家のほか、行政官、専門家会議関係者など83人を対象にヒアリングやインタビューを実施して作成した。 【図】「日本はなぜ死亡者数が少ないか」専門家会議が挙げたいくつかの要因
「場当たり的な判断の積み重ねだった」
クラスター対策による個別症例追跡と罰則を伴わない自粛要請と休業要請を中心とした行動変容策の組み合わせによって、感染拡大の抑止と経済ダメージ軽減の両立を目指した日本政府のアプローチを「日本モデル」と定義した上で、そのモデルの形成過程について、「場当たり的な判断の積み重ねであった」と結論付けている。 民間臨時調査会は、独立系シンクタンクの「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」(東京都港区、船橋洋一理事長)が発足させた。APIは、2011年の福島原発事故を調査・検証した「福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)」をプロデュースした日本再建イニシアティブ(RJIF)を改組して発足した組織。 報告書の中には、いくつかの印象的な証言が記されている。 パンデミックへの備えの欠如を反省する厚生労働省幹部の「喉元を過ぎると熱さを忘れてしまった」という反省の弁、小池百合子東京都知事による「ロックダウン」発言に対する西村コロナ対策担当相の「(ロックダウン発言によって)結果としては緊急事態宣言が遅れた部分があった」という話、いわゆる「アベノマスク」について官邸スタッフが語った「総理室の一部が突っ走った、あれは失敗だった」という振り返り、専門家会議の存在について「ありがた迷惑」とみるようになったという官邸スタッフの言葉などだ。 このほかにも、安倍前首相はコロナ対応を振り返り「我々としては最善を尽くしてきたつもり」と述べたが、官邸スタッフはその実態について「泥縄だったけど、結果オーライだった」と表現したという。 報告書には総括と共に複数の提言も盛り込まれており、8日午前に菅義偉首相に小林委員長が提出する予定だという。