なぜ福岡堅樹は7人制ラグビー東京五輪出場をあきらめ将来医師の人生設計図を貫徹することを決断したのか?
1時間近くにおよんだ質疑応答のなかで、最後まですがすがしい表情を崩さなかった。時には笑顔を浮かべながら、初志を貫く形で下された決断にいっさいの後悔はないとも言い切った。 来夏に延期された東京五輪に臨む、7人制ラグビーの日本代表候補練習生からの離脱が日本ラグビー協会から発表された福岡堅樹(27、パナソニックワイルドナイツ)が、一夜明けた14日にオンライン会見を実施。母国で開催されるヒノキ舞台への挑戦を、道半ばで断念する理由を説明した。 「自分の人生のなかで大きな決断を下すときには、どの選択が一番後悔しないだろうか、ということを常に考えてきました。今回に関してもそれが一番大きく、この選択というものが一番すっきりと受け入れられるものでした」 昨秋に日本で開催されたワールドカップで4トライをマーク。日本代表の悲願だったベスト8進出に大きく貢献し、日本中を熱狂させた韋駄天ウイングに日の丸からの引退を決意させた間接的な理由は世界中で猛威を振るい、スポーツを含めた日本社会全体をも一変させた新型コロナウイルスだった。 「7人制代表の合宿に参加しているときに、東京五輪が延期されるのでは、という可能性が浮上してきました。その時点でどうするのか、ということを自分のなかではすでに考え始めていましたし、実際に延期が決まったときには東京五輪への挑戦を辞退すると決めました。自分はこういう運命だったのかなと、すんなりと受け入れることができたので、落胆といったものは感じませんでした」 トップリーグに参戦しているチームからの離脱を認め、力強く背中も押してくれたパナソニックのチームメイトやスタッフ。そして、男子7人制代表のヘッドコーチも務める岩渕健輔専務理事ら、日本ラグビー協会の関係者とも話し合いや調整を重ねてきたこともあって、東京五輪延期が決まった3月24日から時間をおいての発表および会見となった。 まだ挑戦する気持ちは残っていないのかと、決して少なくない数の声をかけられた。本当にありがたいと感謝しながら、それでも福岡は「決心が揺らぐことはありませんでした」と胸を張って振り返る。ラグビーの道を本格的に極めると決意する前から、福岡はもうひとつの夢を抱いていた。