東京五輪7人制ラグビー挑戦の福岡堅樹がTLラスト試合で”有終の美トライ”「15人制の日本代表に戻ることはない」
一度だけ振り向き、誰も追いかけてきていないと視認した直後だった。パナソニックワイルドナイツの韋駄天ウイング、福岡堅樹(27)は右手で小さなガッツポーズを作り、ちょっぴりはにかんだような笑顔を浮かべ、左手で大事にボールを抱えながら、ゴールポストの間へダイブしていった。 「嬉しい気持ちとホッとした気持ちが、笑顔に出ていたのかなと思います。自分のなかではパフォーマンスに対して納得のいかない部分があり、展開的に苦しい時間帯もあったなかで、ああいう形でトライを取って流れを作ることができて、チームに与える影響としてもすごく大きかったので」 昨秋のラグビーワールドカップ日本大会で日本中を熱狂させた日本代表の盟友で、パナソニックのチームメイトでもある堀江翔太、坂手淳史の両フッカーが「堅樹らしい」とうなり、敵として対峙したトヨタ自動車ヴェルブリッツのフランカー姫野和樹が「最悪でした」と脱帽する。福岡の武器が凝縮されたトライが飛び出したのは、パナソニックが8点をリードして迎えた後半37分だった。 自陣の22メートルライン付近で、トヨタがパスを回して反撃を試みる。しかし、パナソニックがかけるプレッシャーの前に、スタンドオフのライオネル・クロニエのパスが乱れた。ウイングの小原政佑が必死に手を伸ばすも届かず、前へこぼれた先にインターセプトを狙っていた福岡がいた。 ゴールラインを背にした体勢で、ピッチすれすれでボールをキャッチ。さらに素早く反転した福岡は「誰も前にいなかったので、いけるかな」と瞬く間に加速する。攻勢に出ていたトヨタ自動車の選手たちがまったく反応できない、完璧な形でのカウンターが二転三転した一戦にケリをつけた。 豊田スタジアムで18日に行われたトップリーグ2020の第2節。午後1時のキックオフへ向けてピッチに入場してきた福岡は、目に飛び込んできた光景に思わず心を震わせた。 「スタンドの上まで見渡しても、本当にたくさんの人が見える状況だったので。普段のトップリーグでそうなるというのは、本当に幸せなことだとあらためて感じていました」