アメリカ、韓国、日本、そしてドイツ、フランス…なぜ世界中で「民主主義」は機能不全に陥りだしたのか
■ 第5共和制も崩壊の危機に バルニエは、財政赤字を削減すべく、2025年度予算について緊縮予算案を提出し、12月2日、憲法49条3項を使って、国会の投票を経ずに予算案を採択した。しかし、同項の規定によれば、その後、「24時間以内に提出される不信任案が…可決される場合を除き、この法案は採択されたものとみなされる」とある。 しかし、12月4日の国民議会で、最大勢力である左翼連合が提出した内閣不信任案が、極右のRNも賛成したため、331票の賛成で可決された。こうして、バルニエ内閣は、第5共和制で最短の3カ月弱で退陣した。 国民議会の現有勢力は、左翼連合が192議席、RNが140議席、与党連合が163議席、共和党が47議席、無所属議員などが32議席である。 マクロン大統領は、後任首相にフランソワ・バイル元法相(73歳)を任命した。バイルは与党連合の一角を占める「民主運動」の代表であり、左から右まで各政党とパイプを持つ。1993~1995年のミッテラン大統領・バラデュール首相の保革共存政権、それに続く1995年~1997年のシラク大統領・ジュペ首相の保守政権で国民教育大臣を務めた。 バイル首相は、来年度予算案をどのようにして成立させるのか。困難な課題が山積している。今後の展開は読めないし、マクロン大統領に対する責任追及の動きも強まり、大統領への辞任圧力となってこよう。 国会は解散してから1年間は解散できないので、解散によって信を問うということがマクロンにはできない。フランスの政治は混迷の度を深めそうである。 直近の世論調査では、今の第5共和制は廃止したほうが良いという意見が過半数を占めた。1958年にドゴールが始めた第5共和制は、強力な大統領制であるが、同時に国会を代表する首相というポストも設けている。この2頭制が機能しなくなっているのである。 民主主義発祥の地、ヨーロッパで、ドイツであれ、フランスであれ、民主主義が苦悩している。
舛添 要一