アメリカ、韓国、日本、そしてドイツ、フランス…なぜ世界中で「民主主義」は機能不全に陥りだしたのか
ショルツ政権は、社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)の三党からなる連立政権であるが、FDPは財政規律重視の政党である。そのFDPに属するリントナー財務大臣は、財政支出増加に反対の立場を表明したため、社会保障を重視し、大きな政府を求めるSPDのショルツ首相は、政策の相違が埋まらないとして、11月6日、リントナー財務大臣を解任した。こうして、連立政権は崩壊したのである。 ■ ドイツ、2月に政権交代か 12月16日、ドイツ連邦議会(定数733)では、ショルツ首相に対する信任投票が行われたが、過半数の367に届かず207で、不信任が394となり、否決された。連邦議会の現有勢力は、SPDが207議席、緑の党が117議席、FDPが90議席、キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が196議席、極右の「ドイツのための選択肢(AfD)」が76議席、その他が47議席となっている。 ショルツ首相自らが信任投票を求めたのは、否決されることを計算した上で、来年9月の議会の任期満了を待たずに、前倒しで総選挙を行うためである。信任に賛成票を投じたのは、SPD201人、AfD3人などである。AfDが多数賛成に回ると、信任案が可決されてしまう危険性があったので、与党の緑の党は棄権した。 首相信任投票が否決されたことによって、シュタインマイヤー大統領は21日以内に議会を解散し、来年2月23日に連邦議会選挙が行われる見通しである。 公共放送ARDの世論調査によると、政党支持率は、1位がCDU/CSUで32%、2位がAfDで18%、3位がSPDで16%、4位が緑の党で14%である 次期首相候補は、CDUのフリードリッヒ・メルツ党首であるが、経済再建を最優先課題に挙げ、規制緩和を推進するなどして、企業の自由な活動を支援すると主張している。 問題は、CDU/CSUが単独で連邦議会の過半数を獲得する可能性が少ないことである。他の党と連立を組まねばならないが、メルツはAfDとの連立は否定している。緑の党もパートナーとなり得るが、政策の違いは大きい。そこで、SPDと組むという大連立も可能性としては残るが、SPD政権を否定してきただけに、その選択を国民に納得させるのは容易ではない。 ドイツにとっては。1カ月後に発足するトランプ政権への対応も大きな問題であり、2月に発足するドイツ新政権を、世界は期待と不安の念で待ち受けている。