医学系の大学入試で「MMI」が注目する「学生の資質」を見抜く驚きの面接、変わりゆく「医師の資質」をテーマにした設問とは
学生に求める資質を5つのテーマにして面接を行う
横浜市立大学のMMIでは、(1)社会性、(2)志望理由、(3)協調性、(4)独創性、(5)倫理性の5つのテーマの面接を受ける。テーマごとに面接室が用意されており、受験生は1室約10分で順番に面接室を回る。 「5つのテーマは『医学を学ぶ学生に持っていてほしい資質は何か』を議論して上がったものです。(1)社会性、(2)志望理由は、事前に記入された志望理由書をもとに質問しますが、(3)協調性以降はガラリと変わります」(出光氏) 下図は、これまで同大の推薦入試のMMIで実際に提示された(3)協調性、(4)独創性、(5)倫理性の状況課題(シナリオ)の例だ。冒頭で紹介した「第2の富士山を作る」「地球外生命体を絵に描いて説明する」は、(4)独創性にあたる。(3)と(5)では実際の臨床現場で起こったことや、起こりうる状況も課題となっている。いずれも正解がない質問ばかりだが、どう評価するのだろうか。 「各テーマ、担当者がかなり作り込んで評価項目を設定しているため、面接者や受験者によって評価が大きくブレることはありません」(出光氏) 同大の推薦入試は、面接(MMI)1000点、共通テスト1000点の2000点満点で評価されており、MMIの比重は非常に高い。 「一般入試の面接は時間も限られており、いわば『医師に向いていない人』を見つけるもの。成績はよくても倫理的に問題のある受験生を見つけることはできますが、バランスのいい受験生をすくい上げることは難しいです。一方、MMIは本学が求める資質を持つ受験生を見つけることを意識しています。 実際、MMIを通過して入学した学生は2年次からの医学の専門科目の成績がよくて、社会的活動やグループ活動で積極的にリーダーシップをとることが多いのです。それもあり、推薦入試の募集人員を増やしました」(出光氏)
MMIで高評価の学生が入学後に活躍する
そもそもMMIの受験生の傾向は、大学が目指す方向性や求める学生像と重なるようだ。MMIを導入した初年度の願書を見て、すでに手応えを感じたという。 「地域のミッションを担う大学や、開業医の子弟が多い大学など、医大にはそれぞれ特徴があります。その中で本学が目指すのは、臨床医も研究医も育てる多様な環境です。MMIによって、バランスのいいリーダーシップのある学生が入学するようになったことは、本学の方向性にも合うと言えるでしょう。 日本は全体の人口が減少しており、18歳人口だけで見てもどんどん減っています。医療需要は一時的に上がっても、その先は縮小する可能性もあります。今後は、そうした変化への対応も求められるはず。診療に特化した臨床医の育成だけでなく、例えば新たなサービスの創出など、これまでと違った形で社会に貢献する人材が必要になるかもしれません。MMIのテーマに独創性を入れているのはそうした意図もあります。 実際、MMIで高評価を得た学生はすばらしいですよ。医師の資質として協調性、独創性、倫理性が求められるので、バランスのいい受験生を取れるのがMMIのいちばんの魅力ですね」(稲森氏) また出光氏は、推薦入試自体が、優秀な学生の早期確保につながっていると話す。 「推薦入試が拡大するにつれ、『推薦入試では医学科を受けるが、一般入試では他学科を受ける』という受験生が増えています。つまり、『浪人してまで医大を目指せる環境ではないが、チャンスがあればチャレンジしたい』という学生が増えているのです。実際、とある学生は一般選抜では他の国立大学の教育学部を受験する予定だったそうです。一般入試のみだった時代には出会えなかった学生も、入学してくれるようになりましたね」(出光氏)