医学系の大学入試で「MMI」が注目する「学生の資質」を見抜く驚きの面接、変わりゆく「医師の資質」をテーマにした設問とは
変化する“医師に求められる資質”
横浜市の直営だった同大は2005年に法人化したことを機に、カリキュラムや入試改革を行なった。当時の医学部医学科の定員は日本最少の1学年60人。しかし、内閣の閣議決定で緊急医師確保対策が進められ、神奈川県医学部地域枠制度の地域医療枠として20名増員し、定員80名となった。 地域医療枠とは、“卒業後2年間の初期研修後、7年間同大または県内の地域中核病院で専門医研修を受ける”というものだ。2009年には、地域医療枠の増員に加えて修学資金が貸与される神奈川県指定診療科枠も設定され、医学科の定員は90名に増えている。 「それまでは学生同士が助けあって学んでいたのですが、学生数が1.5倍になると学生のコミュニティーも大きくなります。つまずく学生が増えたほか、モラルの低下も問題になり、1種類の入試だけでは限界があるのではないかという意見が出たのです。さらに、2014年に神奈川県と包括連携協定を締結した際、公立高校など県内の幅広い高校から医学科に入学するチャンスを検討すべきということで、推薦入試を導入しました」(出光氏) では、推薦入試ではなぜMMIを導入したのだろうか。 「海外でMMIが導入されて約10年後の2013年、『医学部入試の課題と改革』という国際シンポジウムで、MMIの入学生は臨床実習のレベルが高いことが話題となりました。当時、推薦入試の導入を検討していた私も含む本学の主要メンバーがこのシンポジウムに参加しており、MMIを取り入れることになったのです」(出光氏) 医師に求められる資質が近年変化していることも、MMI導入の背景にあるようだ。横浜市立大学医学部医学教育学教室 主任教授の稲森正彦氏はこう説明する。 「顕著な変化は2つあります。1つは医学知識の量が膨大に増えたこと。昔のように分厚い本で勉強していては追いつかず、ICTなどを活用しながら効率よく進めるタイプが求められています。もう1つ求められているのが、コミュニケーション能力です。一昔前は、権威ある医者のパターナリズムが好まれる傾向にありましたが、今の医療は患者さんを含めた『チーム医療』です。そのため、医師にはコミュニケーション能力や接遇なども求められており、こうした適性を見るにはMMIが合うと考えました」(稲森氏)