元女性の夫と元男性の妻 本来の「性」取り戻した性別逆転夫婦 最高裁「違憲」判断への思い #性のギモン
2022年5月からはYouTubeで「みゆ&あゆむ 性別逆転夫婦の日常」の配信を始めた。生い立ちや性別適合手術の具体的な内容から、夜の営みや整形手術のような赤裸々な話題まで103本の動画が並び、登録者数は3万人を超える(2024年1月現在)。
性別を「変える」のではなく「戻した」二人
1992年生まれの歩夢さんは、保育園児の頃から自分を男だと思っていた。遊び相手もみな男子。無意識に股間を触り、母親に「大きくなるのかなあ?」と話した記憶がある。だが、小学5年生で月経が始まり、自分の体が否応なしに女になっていくことが受け入れられず、卒業式の前日に激しい胃痛を起こす。診断結果は自律神経失調症。精神安定剤が欠かせなくなった。 「中学は女子の制服だったから本当にしんどくて、よく保健室に逃げ込んでいました。でも、特に問い詰められることもなく、安定剤を忘れたときも『これ飲んどき』って、たぶんラムネやと思うんですけど、飲ませてくれて。それでなんとかぎりぎり頑張れたと思います」
転機は高校3年生。性別に対する違和感を打ち明けたクラスメイトからバイセクシュアルの友人を紹介され、「LGBTQ」「性同一性障害(GID)」という言葉を知った。 さらに、自分と同じ専門学校に進学予定のトランスジェンダーとも出会った。「GIDを自認しているその友人に投薬や手術で男性に『戻れる』選択肢があることを教わったことで、安定剤が要らなくなったんです」。 19歳になる年の正月、実家に戻った際に両親にカミングアウト。2カ月経ってようやく母親がカウンセリングの同意書にサインし、3月にカウンセリング、ホルモン注射での治療がスタートした。
一方の未悠さんは1995年生まれ。幼稚園の頃から男女ともに仲良く遊ぶ子どもだったが、小学生のランドセルが赤ではなく黒一択なことにガッカリした。中学生のときにテレビで見たはるな愛や佐藤かよの話から、自分もGIDであることを自認。外出の際はこっそりメイクもするようになった。 中2のときに両親が離婚し、親権をもつ父と祖母との3人暮らしが始まった。カミングアウトしたのは高2の夏休みで、相手は母。なかなか打ち明けられずに2時間泣きっぱなしだった未悠さんを、母親は「誰か殺してしまったのだろうか」といぶかったそうだ。告白後、母は「薄々気づいていたよ」「治療の副作用だけが心配だね」と受け入れてくれたかに見えた。