「男子校や共学でも性教育は必要だと思う」ーー男子だけ女子だけの環境でどう教えるか #性のギモン
「生徒からの抵抗はまったくなかったです。これだけは知っていないとダメよ、身を守ることになるのだと信念をもって教えていましたから、それが伝わるんでしょうね。聞いていないように見える生徒もちゃんと聞いていて、こちらの常識を打ち破るような質問をするんです」 菅沼さんは、夫が開業したクリニックで内科医として診療にあたっていた。たまたま慶應女子高の体育の教員がきて、「患者さんに話すようなことを生徒に話してほしい」とスカウトされた。 「日々患者さんを診ている中で、予防医学の大切さを痛感していたんです。これはいい機会と、二つ返事でお引き受けしました。そのころもう子育てをしていましたから、私自身が『これは知っていてよかった』という知識を、女子高生にみんな教えてしまおうと思いました。彼女たち自身の病気の予防や、妊娠・出産の不安の軽減もありますが、あのころは家族の健康管理や親の介護を女性が担うのが当たり前でしたから、そういう意味でも医学的な知識があればうまく対処できると考えたんです」
妊婦の風しんや子宮頸がん「若いときほど知識が必要」
2年生と3年生、週に1回50分の必修授業。テストもしっかりつくった。保健の教員免許も取得した。 「若いときほど知識が必要です。例えば、先天性風しん症候群というものがありますね。免疫のない女性が妊娠初期に風しんウイルスに感染することで胎内感染して、生まれてきた赤ちゃんになんらかの障害を引き起こすことですが、妊娠する前にワクチンを打つことで予防できるんです。知っていて打たないのは個人の自由ですが、知らなかったために人生に重い荷物を背負ってしまうのは、やはりつらいことです。子宮頸がんもそうですね。ワクチンで予防できると、高校生のうちに知っておく必要がある。学校教育が大事だとつくづく思います」
授業では「心の問題」も扱った。菅沼さんは「『性教育』という意識はなかった」と言うが、若者が性と健康についての科学的な知識を得る機会を保障するという、現在の性教育のコンセプトを先取りするものだった。 「教え子で小児科の医師になった女性がいるんですが、子どもたちに教えたい、予防医学をかさ上げしたいとがんばっています。また別の教え子はアメリカへ留学して、ヘルスエデュケーションの勉強をしています。アメリカではプレコンセプションケアというものが推奨されていて、妊娠する前の若い人たちのためのヘルスケアを指すのですが、日本ではまだあまり知られていないでしょう? 教育と医学・医療が連携して、健康教育のモデルをつくっていくことがこれからの私の夢です」
--- 「#性のギモン」は、Yahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の1つです。人間関係やからだの悩みなど、さまざまな視点から「性」について、そして性教育について取り上げます。子どもから大人まで関わる性のこと、一緒に考えてみませんか。