「男子校や共学でも性教育は必要だと思う」ーー男子だけ女子だけの環境でどう教えるか #性のギモン
40年前から続く「女性学」の授業
愛知県私学協会の「性教育研究会」は、県内の高校生を対象に「高校生の性に関する調査」を実施するなど、性教育の調査研究に力を入れている。主任の中谷豊実さんは、「少子化で共学化が進み、愛知県でも別学の私学が激減しました。女子校のほうが別学を維持しているところが多く、その中には伝統的に性教育に取り組んでいるところもあります」と話す。その一つが、瀬戸市にある聖カピタニオ女子高等学校だ。 同校には「女性学」というオリジナルの教科がある。1年から3年まで各学年1単位ずつ計3単位で認定される。内容は、マナー、性に関する知識、ジェンダーやセクシュアリティー、女性史など、多岐にわたる。
「女性学」の創設は1982年。主任の大窪順子さんはこう話す。 「当時は、多くの生徒が卒業したら就職していました。高校生にとって就職・結婚が今より身近な時代でしたから、社会人として、家庭人としてやっていけるようにと、家庭科の教員が中心となって専門の教科を立ち上げたんです。そこへ私が入って、社会科でしたから、じゃあ女性史をということで担当になりました」 シスターでもある大窪さんは、生徒が個人的な悩みを相談できる「相談室」の室長も務めている。「相談室」も「女性学」と同時期につくられた。 「不登校の子がちらちらと見え始めてきたことが、相談室を設置するきっかけになったと聞いています。私が引き継いでからは、生徒との関わりを深めようと、職員室との連携に努めました」
生徒に寄り添って、カリキュラムを柔軟に変えていく
生徒に寄り添う姿勢は「女性学」にも反映されている。例えば、3年生で扱っていた「性の多様性」を1年に移すなど、その時代に合わせてカリキュラムの内容を検討している。 「『私は男の子だと思うからズボンをはきたい』という子も世の中にはいるから、早めにセクシュアリティーの話をしたほうがいいねと、担当者と話し合って内容を決めています。生徒の中には、自分の性について悩んでいる生徒もいるはずです。その問題を一人で抱え込まないで、大人に相談できることも授業を通して伝えたいですね」 同校でも、産婦人科医を招いての授業の中で、男女の関わり方やデートDV、生理や体のしくみなどに触れるが、そういったいわゆる「性教育」は「女性学」の一部という扱いになっている。今でこそ、性教育は人権に基づくものという認識が広まりつつあるが、長いあいだ、「いやらしい」「寝た子を起こす」とされてきた。 「私たちが教えたいのは『生き方』です。そして女の子にとって、性に関することと生き方は密接につながっています。妊娠して子どもを産むのは女性です。にもかかわらず、男性から性の道具のように見られることがある。そうじゃない。あなたたち一人一人、みんな大切な存在なんだと。それを認めて、一人の人間としてどう生きていくかを考えるには、正しい知識がいるんです」