「男子校や共学でも性教育は必要だと思う」ーー男子だけ女子だけの環境でどう教えるか #性のギモン
女子校だからできる内容、将来を見据えた「ライフスキル教育」
3年になると、どういう結婚生活を送りたいか、子どもを持ちたいか、持つとしたら何歳ぐらいかといったライフプランを考える授業もある。仕事を続ける女性が増え、妊娠適齢期の問題が社会的に浮上してきたことに合わせて、カリキュラムに組み込むようになった。「ライフスキル教育ですね」と井上さんは言う。 「15歳だと性に関することはまだ少し先に感じられて、『おもしろくない』とか『今の自分には関係ない』という感想が返ってくることもあります。みんなの前で話すのは恥ずかしいことという意識もあります。それが、3年かけていろんな角度から学んでいくうちに、性について考えることは生き方を考えることなんだとわかってきて、自分の問題としてとらえられるようになります。自分の性と向き合うことに抵抗がなくなっていくんです」 社会問題を考える授業も多い。2年は調べ学習。今年のテーマはSDGsだ。3年では荻野吟子や津田梅子といった女性の地位向上に努めた先人の生き方を知り、女性の人生がそのときどきの社会にどう影響されるのかを学ぶ。 「歴史を学ばなければ、なぜ今、男女平等が大切だと言われているのかといった、現在のできごとをうまくとらえられないと思うんです。過去の女性たちの生き方が自分たちにつながり、自分たちの生き方もまた未来につながるということに気づいてほしいと思っています」 「生徒の感想を見ると、『私たちは女子校でこれだけ勉強しているけど、こういうことは男子校や共学でも必要だと思う』と書いてくれたりしていますね」
ようやく女性の体のことがタブーではなくなってきた
医師の菅沼安嬉子さんは今年4月、『私が教えた慶應女子高の保健授業』という本を出版した。1985年から2000年まで、母校の慶應義塾女子高等学校で教えた内容をまとめたものだ。 「私が教えたような内容は、女子高生だけではなく、すべての高校生に教えてもらいたいことです。ようやく女性の体のことがタブーではなくなってきましたから、広まっていくのはこれからでしょうね」 菅沼さんが女子高生に教えたのは、医学的な知識だ。 本の章立てを見ると、「脳のはなし」「呼吸・循環と応急処置」「血液と血液が原因の病気」「消化器の病気と危険な食べ物」といった具合。「女性の体」には特に多くのページが割かれている。生殖器と月経のメカニズム、生理のトラブルと増えつつある子宮内膜症。妊娠・出産は、受精に始まり、染色体と性別、多胎や不妊症、妊娠持続期間とそのあいだに気をつけることなど、詳しく書かれている。