「男子校や共学でも性教育は必要だと思う」ーー男子だけ女子だけの環境でどう教えるか #性のギモン
「こういう授業を聞けてよかった」生徒は肯定的
立教池袋中高では、中学1年から高校3年までの各学年で1年に1回か2回、外部から講師を招いて命と性に関する特別授業を行う。 「中学1年では、助産師さんから思春期の体と心というテーマで話してもらいます。自分の性器のことやセルフプレジャーのこと、女の子の生理のことなど。中学2年は性の多様性、中学3年は妊娠・出産といのちについて。高校生になると講師の方の生き方から学ぶような内容が加わります。エイズの患者さんと向き合う医師の人生観だったり、がん治療で心のケアにあたる精神科医から生と死についての話を聞いたり」
生徒の反応は肯定的だ。 「こういう授業を聞けてよかったとか、中学校の講義がよかったから高校でも楽しみにしているという声を聞きます」 年に1、2回の特別授業で教えられる内容には限りがある。しかし無理に特別授業を増やそうとは考えていない。 「本校の性教育は『男子だからこれを教えなければ』ではなく、『自分の人生をどうやって生きていくか、一緒に考えようよ』というスタンスなんです」
性教育は、自分らしく生きていくための手がかり
真崎さんが同校で性教育を実践し始めたのは2011年。 「たまたま村瀬先生の話を聞いて、こういうことも伝えていかないといけないんだなと思ったこともあり、友人の助産師に『うちの中3に話してくれない?』と頼みました。その授業を生徒のみんなと一緒に受けて、自分は性教育を理解していなかったことにショックを受けました。性について考えるのは、自分がどうやって生きていくかを考えることなんだとそのとき気がついたんです」 次に、泌尿器科の医師を招いて高1向けの講演をしてもらった。しかし、その先は簡単に理解を得られたわけではなく、進め方には反対意見も出た。
「そんなときに保健室の棚からある資料が出てきました。本校で過去に実践されていた性教育の1973年度の記録です。性行動を聞くアンケート調査も行われていて、しっかりと性教育に取り組んでいたことがわかりました。熱心だった人がいなくなって、途切れてしまっていたんです。それを読むと、性教育の目的は今と同じです。子どもたちが正しい知識を学び、社会の中でどのように生きていくかを考えられるようにしていくこと。反対意見の人に資料を見てもらい性教育について話し合いました」 意見の対立があり、そこに対話が生まれたことが同校の性教育の前進につながった。2014年に性教育の研究・研修を担当するプロジェクトチームが立ち上がり、2017年に現在の「性教育研究委員会」に改組された。 今後の課題は、同校らしい性教育を継続していくことだという。 「性教育は、自分らしく生きることを考える手がかりの一つだと思っています。私にとっては、生徒も教職員も保護者も、みんなこの大変な時代を生きる仲間で、それぞれが自分らしく生きていけるといいよねという思いがあります。生徒に何を伝えたいかを自分たちに問いながら、私たち教職員も生徒と一緒になって学んでいきたいと思っています」