キシリトール入りのガムって、ほんとに虫歯にならないの? キシリトールが死亡リスクを上げるって本当?【歯科医師が解説】
キシリトールを活用した取り組みの例
このようにキシリトールの虫歯予防効果は未解明な部分があるものの、予防歯科先進国であるフィンランドでは予防歯科のために歯磨き・定期的な歯科検診・フッ素にさらにキシリトールを加え、効果を上げています。 このフィンランド式のキシリトールを取り入れた歯の健康啓発活動の一環として、2024年11月に東京都内の小学校で、あるプロジェクトが実施されました。 これは、給食後にキシリトール入りのガムを噛んで虫歯予防しようという取り組み「給食後にもキシリトールを噛もう!プロジェクト」であり、「いい歯の日」である11月8日にちなんで5日から8日までの4日間、東京都豊島区立の全小学校で行われたのです。 このプロジェクトでは、給食後の児童はキシリトール入りガムを噛むとともに、5分間のガムタイム中に豊島区歯科医師会の歯科医師による歯の健康やキシリトールに関する動画を視聴しました。 このような試みはキシリトールの効果だけでなく、子どもたちが虫歯予防について考えるいい機会になり、毎日の歯磨きに対するモチベーションの向上にもつながります。キシリトールを一つのツールとして、予防歯科の啓発活動が広がるといいですね。
キシリトールの安全性
先述したようにキシリトールはWHOや厚生労働省が安全性を認めていますが、2024年6月にアメリカのグループが報告した研究では、3000人を超える住民などを対象に血液中のキシリトールのレベルを測定し、健康との関連性について調査しました。 その結果、3年間にわたって追跡調査したところ、血中キシリトールレベルが上位25%に位置する人々は心臓発作、脳卒中または心血管関連の死亡リスクが2倍近くに増加することが明らかになりました。また、キシリトールは血栓形成促進性があり、血管を詰まらせやすくする性質があることも判明しました。 このような研究報告があれば、「キシリトールは危ない」と思われがちですが、通常の範囲の少量摂取であれば、消費者である私たちが心配する必要はないと言えるでしょう。 ただし、一度に多めのキシリトールを摂取すると腹痛や下痢といった消化器症状を引き起こす可能性があります。これはキシリトールの小腸での消化・吸収が難しいからですが、症状は一時的なものであり、大きな問題にはなりません。