日銀・黒田総裁会見6月18日(全文1)コロナ資金繰り支援の期限を半年延長
金融仲介機能が円滑に発揮されるか注意が必要
リスク要因としては新型コロナウイルス感染症の帰趨や、それが内外経済に与える影響といった点について不確実性が大きいと考えています。さらに感染症の影響が収束するまでの間、企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下せず、また、金融システムの安定性が維持される下で、金融仲介機能を円滑に発揮されるかについても注意が必要です。 日本銀行は2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続します。マネタリーベースについては、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続します。 また、引き続き「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム」、国債買い入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、それぞれ約12兆円および約1800億円の年間増加ペースの上限の下でのETFおよびJ-REITの買い入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めてまいります。 その上で当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があればちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じます。政策金利については現在の長短金利の水準、またはそれを下回る水準で推移することを想定しています。以上です。
資金繰り支援延長を決めたのは念のためか
日本経済新聞:それでは幹事社から2問ございます。まず今回、延長を決めた資金繰り支援策についてです。足元で、国内でもワクチン接種が加速してきておりまして、経済情勢に少し明るい展望も見えてきたような状況かと思いますけれども、まだまだ資金繰りというところに関して、日銀として楽観できないということで今回、半年間の延長を決められたのか、あるいは保険的なといいますか、おそらく戻ってはくるんだけれども念のため今回、延長を決めたということなのか、資金繰りの環境認識と併せて詳しく教えていただきたいと思います。これが1点目です。 続けて2点目も質問させていただきます。今回、気候変動対策で新たな資金供給策の決定をされたと思います。こちらはこれから詳しい制度設計ということかとは思いますけれども、この金融機関の気候変動関連の投融資って具体的にどういったものを期待しているのかとか、あるいはそういった動きを促すために上乗せ金利を付けるだとか、どういったインセンティブを今、日銀として考えていらっしゃるのか、この辺りの狙いとか制度設計面を伺えればと思います。 併せて、中銀と気候変動の関係というところで、その使命についても、今回のステートメントでも触れられていますけれども、では今回の措置をすることで具体的にどうやって、じゃあ中銀の使命と気候変動を絡めてくるのかというところで、例えば今回のオペで経済成長とか物価の押し上げに資するということでやろうとしているのか、あるいはほかの狙いがあるのか。そういった波及経路みたいなところについても教えていただければと思います。私からは以上です。 黒田:前段のご質問につきましては、日本銀行は昨年の新型コロナウイルス感染症の拡大以降、「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム」を含む強力な金融緩和措置によって企業の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めております。これは感染症の影響を受けた企業などが資金繰り面から困難に陥ることを防ぐとともに、今後、感染症が収束する中で速やかに事業を再開していく環境を整えるということがあるとともに、金融市場の混乱が実体経済に悪影響を及ぼすという悪循環を防ぐということが狙いであります。