「丸亀製麺」なのに香川・丸亀に店舗なし トリドール、うどん作りを学ぶ「心の本店」開業
大手うどんチェーンの「丸亀製麺」などを展開するトリドールホールディングス(HD)が、讃岐うどんの本場として知られる香川県丸亀市の離島、広島(通称・讃岐広島)に、研修施設「心の本店」をオープンした。丸亀製麺と名乗りながら丸亀市発祥ではなく、同県で営業するのは高松市内の1店舗のみ。ネット上などでは店名への批判もある中、同社が〝聖地〟と位置付ける丸亀市に研修施設を設けた目的とは。 【写真】記念式典後には島民らにエビ天うどんが振る舞われた。左から4人目はトリドールホールディングスの粟田貴也社長 ■原点に立ち返る 「原点に立ち返り、生産者への感謝や食材への思い、おもてなしの心を学ぶ場にしていきたい」 11月27日に開かれた記念式典で、トリドールHDの創業者、粟田貴也社長(63)は心の本店についてこう説明した。 丸亀製麺は香川県内には1店舗しかないが、丸亀市とは同じ名前のよしみで関係が深い。兵庫県加古川市出身の粟田社長が同市で焼き鳥店開業後に店舗の差別化を模索していた平成10年ごろ、父親の故郷である香川県を訪れ、目の当たりにした製麺所の行列から鮮烈な印象を受けた。讃岐うどんへの憧れを表象する名称として、縁起のよさそうな言葉でもあり「丸亀製麺」と命名した。同社にとって丸亀市は聖地というべき位置付けだ。 同社は令和4年に丸亀市と地域活性化に関する包括連携協定を結び、離島振興などに取り組む。 丸亀市との調整役を担っていた同社の木村成克(あきよし)CSV推進課長(46)は、島民の温かさに惹かれ2年前に讃岐広島へ移住。1カ月のほぼ半分は島にいて残りは出張や本社で勤務する。最初の1年は島になじむことを心がけ、自治会や消防団に参加して島民との交流を深めた。 小麦づくりの師匠と仰ぐ山脇千枝子さん(94)と出会い、畑を借りて小麦栽培を始めた。農作業は未経験だったが、「重労働で腰が痛いけど楽しい。農家の丁寧な仕事ぶり、作物への思いを知ることができた」と木村課長。「店には製麺機があるし、ボタン一つで小麦が発注できる。小麦を手で植えて麦踏みをし、鎌で刈り、脱穀まで自分たちでする。経験してみなければ、生産者の苦労や気持ちは理解できない」と力説する。そんな思いから、社内活動報告会で心の本店構想を提案、実現にこぎつけた。 ■うどん作り体験