人口減で避けて通れぬ「海外進出」 狙うべき国・市場、スタイルのヒントを探る
かつて、日本企業の海外輸出は1980年代後半の円高を受けて活発化しました。それが今では、「国内市場の飽和」を背景として、さらなる成長を遂げるためにグローバルに進出するしかない――といった消極的な文脈で語られることが多くなっています。 【画像】ビジネスパーソンが押さえておくべき、2050年の各国の人口、各国GDPの平均成長率など(計4枚) 「失われた30年」という言葉を聞いたことがある方も、多いはず。1989年には、世界の時価総額ランキングトップ20のうち、70%(14社)を日本企業が占めていました。しかし、2023年2月末時点では1社もありません。 次の図からは、上位企業の時価総額が飛躍的に拡大しているのがみてとれます。1989年に1位だったNTTの時価総額がそのままだったとしても、2023年には50位以内にすら入らないほど、世界各国の企業は発展を遂げたのです。 また、金融業や製造業が上位を占めている1989年と比較し、2023年は、IT企業や事業が複合的に展開され相乗効果を創出している企業が多く見られます(例:アマゾンはクラウド事業、通販事業、サブスク事業。テンセントはSNS事業、金融事業、ゲーム事業など)。 つまり世界市場で戦うには従来の事業モデルでは勝率が高まらず、多様な顧客に多様なシーンで利用してもらえる、新たなビジネスモデルや技術を保持した展開が必要だと想定されます。 上位にランクインしているのは、世界中をマーケットとして展開している企業ばかりです。もちろん、売り上げの拡大を求めず、利益重視の経営にシフトする戦略もあるでしょう。しかし企業規模の拡大を求める場合、グローバル市場への展開は避けて通れない道ではないでしょうか。 そして、前述したように、ビジネスモデルこそ多様性を重視し、ターゲットはグローバルを見据える戦略設計が求められていると感じます。
人口とGDPで、これからの世界を予測すると……
今後のグローバル市場の大きな指標として、人口とGDPを確認したいと思います。次の表は、2024年時点で人口ボリューム上位の国が2050年に向けてどの程度増減するか整理したものです。 今後、日本、中国、ロシアで人口が減少していく見込みです。対して、人口増加が著しいエチオピア、フィリピン、ベトナムなどは日本の人口を追い抜き、低所得層が減り、中所得層が増えて経済が活性化していくことが予想されます。こうした国々は、日本がかつて迎えた高度経済成長期のようなゾーンに入っていくのです。 GDP成長率でも、日本は世界各国と比較して厳しい状況にあることが分かります。グラフ内の赤線で囲った国は、人口増加とGDP拡大の両面から考える今後の「成長有望国」。日本企業でもこれらの国に進出するケースは多く見られます。 特に増加しているのが、小売りや製造です。小売企業ではグローバルを主戦場にシフトしている傾向にあり、ユニクロや無印良品は既に海外店舗の方が多く、ニトリは2025年3月期が、国内新規出店数(62店舗)を海外出店数(100店舗)が上回る計画で進行しています。