患者はどうつき合う? 医者の本音とリアル 松永正訓
Q 開業医になるのはどんな人ですか? A 大学病院や一般病院である一定のレベルまで到達するまでは、開業医になることはできません。つまり開業医は、ベテランの医者がやる仕事なのです。ものすごく若い開業医も稀(まれ)に存在しますが、その実力はあまり信用できないと言っていいでしょう。それだけ、開業医というのは独立するまでの自分の経験と知恵を売り物にしている仕事といえます。2006年の厚生労働省の資料では、全国の勤務医の平均年齢は43・4歳、開業医は59・4歳と報告されています。2020年のデータだと、開業医の平均年齢は60・2歳とさらに上がっていました。 ◇医者とお金 Q 開業するのに、どれくらいお金がかかるんですか。 A 一般には1億円前後かかるともいわれています。僕が開業したのは44歳の時ですが、開業を決意したときの貯金はわずか200万円ほどでした。とはいえ、自己資金も担保もなくても、きちんとお金を貸してくれる人がいます。おまけにコンサルタントのように、開業までのステップをすべて支え、導いてくれます。僕がクリニックの経営をきちんとできれば、貸したお金に加えて利息が回収できるのですから、お互いウィンウィンの関係というわけです。 僕の場合はコピー機で有名なR社の営業の青年が、当時僕が勤務していた大学病院にまで来て、いろいろと説明してくれました。その青年からは、「先生が希望の土地を選んで、地主である大家さんにクリニックを建ててもらう。そして先生が大家さんに家賃を払って診療する、〝建て貸し〟という方法もありますよ」と教わりました。 よくビルの一角のテナントにクリニックを持つ医者がいますが、それを「ビル診」と言います。建て貸しはビル診より少し出費は多いけれど、自分で土地を買ってクリニックを建てるよりは、はるかに価格は安い。 土地探しには紆余(うよ)曲折ありましたが、僕の自宅から車で約20分のところに遊んでいる広い土地があって、地主さんにお願いして無事、クリニックを建てることができました。そしておかげさまで開業から半年後には、行列のできるクリニックになり、借金は繰り上げ返済で返すことができました。自分でクリニックを開業して潰れたという話は例外的にしか聞いたことがありませんので、高い確率で儲けは出る職業といえます。