患者はどうつき合う? 医者の本音とリアル 松永正訓
◇大学病院と一般病院と開業医の違い Q それぞれの医療機関により、医者はどう違うのか、改めて教えてください。 A 医者は大きく、大学病院と一般病院と開業医という三つにわけられます。大学病院は、研究と臨床と教育の場です。論文の読み方を学び、学会に参加して、夜になると研究棟で実験もしますし、若い医者や医学生、看護学生に授業もします。手術前と手術後には症例検討会をきっちりやって、手術の良かった点や悪かった点を徹底的にディスカッションします。それは、さながら道場のような雰囲気です。ただ、大学病院では難易度の高い手術を執刀するのはベテランの医者が中心ですので、その地位に上り詰めるまでメジャーな手術はなかなか回ってきません。 それに対して、一般病院はとにかく臨床、臨床の毎日です。僕が千葉大病院から、32歳で沼津市立病院へ出向したときは小児外科医は僕1人だったので、年間およそ200人の子どもの手術をしました。とにかく手術がたくさんできたので経験も積みましたし、なにより自分の手で患者さんの命を救っているという実感がありました。 開業医も同じく臨床の日々ですが、朝から夕方まで基本的にはずっと椅子に座って患者さんの診療を続けます。開業医の仕事の一つは病気がまだあまり進行していないうちに見抜いて大きな病院へ紹介することで、難しい病気の治療を自分で行うことではありません。僕のクリニックでは1日で最高150人ほど診(み)たこともありました。そういう時は、それこそ分刻みで診療することになります。 Q 若い先生とベテランの先生、どっちがいいですか。 A 医者は初期研修医、後期研修医を終えたあと、専門医試験を受けることができます。小児科専門医は、早ければ卒後6年で取得できます。しかし、もちろんその6年目で一人前とは言えません。内科系であれば初期研修医が終わってから最低10年は必要でしょう。外科医は手術数とともに成長するので、それより長く、15年以上の経験が欠かせないと思います。若手の医者が開業するとクリニックには最新設備もあり、ピカピカと光り輝いているかもしれませんが、経験が十分かといえば、そうではありません。内科医は年齢とともに生きるうえでの知恵や人間力が増していきますが、外科医のピークは60歳くらいでしょうか。ベテランの医者の中には、若い頃の馬力がすでになくなっているような人もいます。もちろん例外もありますので、そのあたりを患者さんが見極める必要があるといえるでしょう。