「ひとりで旅行だって、行かせてやったのに…」定年間近で妻に捨てられた【クズ亭主】が、捨てられる日まで気づけなかったこと。
普通にSNSを使いこなしているだけでのめり込んだ状態には見えないが、それの何が問題だったのだろう? 「料理の写真を撮影するとかで、食事を待たされることがあって。それがきっかけで久しぶりに言い合いになったんです」。 結婚して36年、美智子が公平にたてをつくことはほとんどといっていいほどなかった。 「言い合いになるほど、話をしてこなかったんだと思います。僕は忙しくて、子どものこと、学校のこと、家のこと、すべてを妻に任せっきりだったもんですから。実際、子どもの通っていた高校がどこにあるのかもわからないし、家関連の書類がどこにあるのかも知りません」。 令和の今ならありえないことだが、昭和生まれの夫婦にはあるあるな状況である。 「どの家庭もみんなこんなもんですよね、普通です、普通」。 公平と美智子が話すことといえば、会食で遅くなる、明日はゴルフなど、公平の連絡事項ばかり。 「よく考えてみたら、妻のプライベートを何も知りません。数年前にはじめたパート先のことも、友人関係も、もちろんSNSのことも。だから料理の写真を撮ることがそんなに大切なことだったなんて、知る由もなかったんです」 言い合いの結果、折れたのは美智子だった。その日以来、写真を撮影するという理由で食事を待たされることはなかった。 「普通ですよね。僕が養っているんですから。食事くらい待たせることなく食べさせてくれっていうだけの話です」。 背筋の凍るセリフだが、これが現実である。美智子はそれ以上、何も言わなかった。しかし、別の異変が起きたという。 「外出が増えているようなんです。僕より先に家を出ることもあるんですよ。信じられませんよね」。 公平は美智子の態度に苛立ちを隠せなかった。 「これまで40年以上、家族のために働いてきたんですよ。定年間際になって、呑気にSNSをしたり、遊びに出たり…挙げ句の果てに朝、送り出さないなんて信じられませんでした。間違った思い込みをただすために、何でこちらが時間をとって説教しなければならないのかと、情けなくもなりました。いい年なのに、新婚の時にするような夫婦喧嘩をなんでいまさら、とね」 そんな公平のイライラに拍車をかけるような事態が起こった。美智子が1人で旅行に行きたいと言い出したのだという。