【ABC特集】「改めて自分も遺族だったと思い出して、涙が出ました」 クリニック院長の妹が京アニ裁判の傍聴席で気付いた”フタをしていた悲しみ” 北新地クリニック放火殺人事件からまもなく2年
仏教の修行、そして京アニ裁判の傍聴へ
今年6月から伸子さんが新たに取り組んだのは仏教の修行でした。悩みや相談を受ける際、色々な引き出しを持っていたいと感じていた伸子さん。仏教が人に寄り添うことだと知り、奈良にある生蓮寺に通い始めました。半年をかけて出家を目指します。修行を重ねるうちに、伸子さんは気持ちに変化が出てきたと言います。 (西澤院長の妹・伸子さん) 「悪いとか良いとかじゃなく、その人なりでいいって。そういう考え方も、昔は思えなかったので。日々勉強していくとそうなっていくのかなと思う」 兄の遺志を継ぎ、元患者たちの支援に全力を注いできた伸子さん。しかし、自分自身については、ずっと避けてきたことがありました。 それは「遺族」としての自分と向き合うということ。
京アニ裁判を傍聴
9月20日、伸子さんの姿は京都地方裁判所にありました。 (西澤院長の妹・伸子さん) 「似たような事件ということでよく質問を受けることもあって。ご遺族の方もいらっしゃる中で、自分がどういう風に感じるか、今後何か変わりがあるのかそんなのもわからないままに、ただ聞いてみたいと思って来ました」
36人が亡くなった京都アニメーション放火殺人事件。ガソリンを使い、多くの死者が出るなど、北新地の放火事件と共通する点があります。谷本容疑者が住んでいたとみられる住宅からは京都アニメーション放火殺人事件を報じる新聞記事も見つかっていました。 伸子さんが傍聴に訪れたこの日は、被害者の遺族質問が行われる日でした。 (西澤院長の妹・伸子さん)「ご遺族の方の質問が始まった時だったので、このタイミングで行ったのもそこで私が何か感じる必要があったのかと」 (記者)「聞くべき運命だったということですか?」 (西澤院長の妹・伸子さん)「そうですね」
知らぬ間にフタをしていた悲しみ
裁判で遺族らは、被告に対しこう質問しました。 「放火殺人をする対象者に家族、特に子どもがいることは知っていましたか?」 伸子さんは裁判の内容をメモに記していましたが、この質問を聞いた瞬間、手が止まったといいます。 (西澤院長の妹・伸子さん) 「質問される前に、ものすごく大きな深呼吸をなさってから言葉を発せられて『家族がいることを子どもがいたこととか知っていますか?』って本当に声が震えながら聞かれていたんですよね。それが一番私の中でも辛かったというか・・・うん、そうですね・・・改めて自分も遺族だったと思い出して、家族とか子どもとかを思い浮かべてしまって、涙が出ました」 事件直後から、知らぬ間にフタをしていた悲しみが、あふれ出しました。