【ABC特集】「改めて自分も遺族だったと思い出して、涙が出ました」 クリニック院長の妹が京アニ裁判の傍聴席で気付いた”フタをしていた悲しみ” 北新地クリニック放火殺人事件からまもなく2年
2021年12月17日。大阪・北新地の心療内科クリニックで起きた放火殺人事件。職員や患者ら26人が死亡し、クリニックの院長だった西澤弘太郎さん(当時49)も命を落としました。
殺人などの疑いで書類送検された谷本盛雄容疑者(当時61)は、このクリニックの患者の1人でした。自身も煙を吸って死亡。不起訴処分となり裁判が始まることはありませんでした。警察は、孤独や生活苦によって自暴自棄になり、多くの人を巻き添えにする「拡大自殺」を図ったなどと結論づけ、捜査を終結しました。
西澤院長は発達障害の治療や復職支援に力を注ぎ、多くの患者から信頼を寄せられていました。 (西澤院長の患者) 「患者目線にすごく立ってくれた良い先生でした。大阪で1番の心療内科の先生やと思います。」 「もっと先生に診察してもらって、体調が良くなるまで肩を押してもらいたかったなって」
事件から3ヵ月が経った頃、顔を出さないことを条件に,西澤院長の妹・伸子さんが初めて私たちの取材に応じてくれました。 (西澤院長の妹・伸子さん) 「事件の直後からですけど、考えられないというか、考えないように自分が閉ざしている気がしていて。ずっと夢を見ているような現実ではないような。そんな感じでいつも生活をしていて」
兄の遺志を受け継ぎ・・・
伸子さんは事件後、兄の死を受け入れられずにいました。ただ、二度とこのような事件が起きないよう、兄の遺志を受け継ぎ、社会から「孤立」をなくす方法を模索していました。 (西澤院長の妹・伸子さん) 「いろんな事件が、孤立が事件を起こしているんじゃないかとすごく思っていて。そこをみんなが考えていかないといけないんじゃないか。1人が思うのではなくて、みんなが意識していければ変わるんじゃないかなと」 伸子さんは兄が通っていた心理カウンセラーの講座に通い、去年9月に初級課程を修了しました。そして「話を聞く側がまず心を開く」という思いからカメラの前で顔を出すことを決意しました。クリニックの元患者に限らず、悩みを抱えた人たちの話を聞き、少しでも力になれたらと、活動を続けています。