女性ホルモンが減ってきたら「ややぽっちゃり」を目指しましょう。痩せ気味女性は、体重をちょっと増やすだけで「疲れやすい」「冷え」の解消にも
高齢者や女性の健康をサポートする外来で日々診療を行う宮尾益理子先生は、「更年期以降は、それまで守ってくれていた女性ホルモンがなくなるので、意識して自分の体を管理してほしい」と話します。どんな不調が表れ、どう対処すべきかを聞きました(構成=山田真理 イラスト=こやまもえ) 60代以降の適正体重は? * * * * * * * ◆本当の試練は更年期を過ぎてから 私は都内のクリニックで老年医学をベースに、糖尿病、内分泌代謝、骨粗しょう症などさまざまな専門領域で診療を行っています。 年齢を重ねると、複数の不調を同時に抱えることが多くなり、筋力の衰えや認知機能の低下といった特有の現象も起こりがちです。そのため老年医学では患者さんを多方面から診断し、この先起こりそうなリスクも想定しながら治療・予防策を考えることを重要視します。 もうひとつ私が力を入れているのが、男女の違いに注目した「性差医療」。女性は初潮から閉経までの約40年間、月経周期に合わせて体調が変化し、特に更年期にはホルモンバランスの乱れから心身にさまざまな不調が起こります。 閉経後は女性ホルモンの枯渇によってさらなる不調や病気に見舞われることに。このように、女性の心と体は、一生を通じてホルモンの影響を強く受けているのです。 ひと昔前は、更年期後の人生は比較的短いものでしたが、現代人は寿命が延び、閉経後の期間が長くなりました。女性の平均寿命は87.09歳(2022年厚生労働省調べ)ですが、実は亡くなる人がいちばん多いのは93歳というデータも。つまり、閉経後40年近くも、女性ホルモンのない状態で過ごすのです。
そもそも女性ホルモンのエストロゲンには、高血圧、高血糖、高コレステロールを抑える働きや、破骨細胞が骨を壊す働きを調節して骨強度を保つ作用があります。 閉経後はこうしたエストロゲンの恩恵を受けられなくなるため、動脈硬化や骨粗しょう症のリスクが上昇。 また、エストロゲンは皮膚に弾力やうるおいを与えるコラーゲンの生成にも関わるため、閉経後は肌や粘膜の乾燥・不快感、関節の不調につながることもあるのです。 さらに注意しなくてはいけないのが、「自律神経の乱れ」。自律神経には交感神経と副交感神経があり、体の中でオンとオフを切り替える働きをしています。このバランスが乱れると、頭痛や疲労感、めまい、冷え、むくみ、便秘・下痢、不眠などが起こるように。 自律神経は老化によっても働きが衰えるため、アフター更年期にこうした不調を長引かせる人が多いのです。 「年のせいかな」「病院へ行くほどではないのでは」と不調を我慢している人もいるかもしれませんが、その不調の陰に病気が隠れていることもあります。更年期が終わったあとは定期的に健康診断やがん検診を受け、症状があればためらわずに医療機関を受診する。 そして生活習慣や体調を見直し、意識的に自分の体を守らないと、30年、40年続く将来の健康を維持できないと覚えておいてください。
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