米国では毎年約6人に1人が食中毒に、知っておくべき食中毒の危険な病原体とその対策
ノロウイルス
激しい下痢や嘔吐を引き起こす感染力の強いノロウイルスで、近年、集団感染がたびたび発生している。一般的な胃腸炎の原因だが、効率的に増殖するため、非常に危険な存在だ。 「病原体には個性があり、それが病気の特定に役立ちます」とスード氏は話す。「ノロウイスルは突然発症し、重症化する傾向があります」 ノロウイルスの感染が急速に拡大するのは、嘔吐が激しく、嘔吐物がエアロゾル化し、ウイルスの粒子が狭い空間で浮遊するためかもしれない。 感染は、人と人の接触、汚染された食品や水、排せつ物との接触によって起きる。感染は多くの場合、学校やクルーズ船、航空機、老人ホームなどの閉鎖空間で発生する。こうした空間は、徹底的な清掃が難しいこともあり、感染のリスクが高い。 ノロウイルスに感染すると、12～48時間で発症し、腹痛や吐き気、発熱などの症状が現れる。 「ノロウイルスのもうひとつの特徴は、非常に長い期間、環境中にとどまる傾向があることです」とスード氏は補足する。米国医師会によれば、残念ながら、ノロウイルス感染症は、症状が治まっても、感染力が数週間続く可能性がある。
サルモネラとカンピロバクター
サルモネラによる食中毒は多くの場合、腐った食品や加熱が不十分な食品を食べたり、触ったりすることが原因だ。一般的で有名な細菌だが、感染すると死に至る可能性がある。 この細菌に感染すると、「簡単に病院送りになる」と米ジョージア大学食品安全センター所長で教授のフランシスコ・ディエス・ゴンザレス氏は話す。 通常、サルモネラに接触して6時間から6日で発症し、胃腸炎、高熱、ときには血便を伴う。 感染が起こりがちな場所はふれあい動物園や農園、飲食店、保育所などで、動物との接触、汚染された土壌や肥料もしくは水に触れた生野菜を食べることで感染することが知られている。カンピロバクターという細菌も感染経路が似ており、同じような症状が見られる。 「米国で発生するサルモネラ食中毒の多くは、大流行と呼ばれるようなものではありません」とディエス・ゴンザレス氏は話す。ほとんどの場合、サルモネラへの感染は家庭内で起きる。そのため、消費者一人ひとりが食品の取り扱いに気を付けるべきだ。 サルモネラに感染しても、ほとんどの健康な人は水分補給を受けるだけで回復する。健康上の問題を抱えている人は、感染が腸から血流に広がらないよう、抗生物質が必要なこともある。
