米国では毎年約6人に1人が食中毒に、知っておくべき食中毒の危険な病原体とその対策
気温上昇とともに感染者も増加 最悪、死に至ることも
気温が上昇するにつれて、食中毒のリスクも高まる。2024年夏の記録的な暑さは、米国ですでに1件の大規模な食中毒を引き起こしている。米国当局は5月以降、加工肉食品に関連したリステリア症の急増を調査している。これまでに数十人が体調不良を訴え、2人が死亡している。 「病気を生む顔」になる食べ物とは 画像5点 米食品医薬品局（FDA）によれば、米国では毎年、約4800万人（約6人に1人）が食中毒になっている。 「食中毒はよくあることで、食中毒と診断される件数より、実際の件数はさらに多い可能性が高い」とジョンズ・ホプキンス大学医学部の助教で、感染症を専門とするギーティカ・スード氏は述べている。 しかし実は、「良いことだ」とスード氏は説明する。「つまり、食中毒になっても、ほとんどの人は入院や治療が必要なほど重症化しないということです。通常、食中毒は自然に治癒します」 食中毒の症状が軽い健康な人の場合、治療は不要なことが多く、水分を大量に補給すれば数日で回復する。ただし、症状が重い場合、医療介入が必要なこともある。 食中毒の予防策は、（特に手や調理場を）徹底的に洗浄すること、食品にしっかり火を通すこと、調理中の二次汚染を避けること、室温に2時間以上置かれていた食品を使わないことなどだ。 台所（そして腸内）を有害な細菌から守ることは、経験豊富な料理人にとっても難しい。ここでは、私たちの料理を汚染する最も一般的で危険な病原体を紹介しよう。
リステリア
リステリアは命に関わる病原体のひとつで、工場の排水管のような湿った環境と自然界の両方で繁殖している。米国では、食中毒による死亡例が3番目に多い病原体だ。リステリアがこれほど危険なのは、髄膜炎などの致死的な細菌感染をしばしば引き起こすためだ。 リステリアは、乳幼児や妊婦、65歳以上の高齢者、免疫力が低下している人など、脆弱（ぜいじゃく）な人にとって特に危険な病原体だ。リステリアの感染は、殺菌されていない生乳やホットドッグ、ドライソーセージ、魚介類の燻製（くんせい）、サラダなどと関連づけられている。 通常、汚染された食品を食べて数時間から数日以内に発症し、発熱や吐き気、嘔吐（おうと）、首のこわばり、激しい頭痛、けいれんなどを伴う。妊婦の場合、筋肉痛や倦怠（けんたい）感を特徴とするインフルエンザのような症状が出ることもあるが、流産や死産といった合併症を引き起こすこともある。 リステリアは人から人に感染することはない。ただし、汚染された食品から近くの表面に広がりやすく、完全に取り除くのは難しい。食品を冷凍しても、リステリアは死滅しない。薄めた漂白剤で表面に付着した細菌を除去できるほか、食品を約75度以上に加熱すれば死滅させることができる。
