ノーベル賞大隅氏の「オートファジー」なぜ細胞の中身を“壊す”のが大事?
まだまだ謎が多いオートファジー
――最後に、先生がオートファジーの研究をなさっているモチベーションを伺いたいのですが。 生き物は何を研究しても面白いと思いますが、学生の時にオートファジーの仕組みを研究していて、次にその役割が知りたくなりました。「体の中で何をやっているのだろう?」というすごくシンプルな問いの答えを知りたくなりました。 ――「面白い」とお感じになるのはどの部分ですか? 細胞の中でそれまで存在しなかった小器官(オートファゴソーム)が一気につくられて仕事をするわけですよ。しかし、どのようにつくられるかはまだ誰もきちんとは知りません。しかも、細胞が健康を維持するのにとても大事です。 ――先生ご自身は、どのくらい解明が進んだとお考えになりますか? まだまだ謎は多いです。大隅先生がオートファジーを起こす遺伝子を見つけてから研究が進みましたが、それらの分子がどのように仕事をして、オートファジーが起こるのかはまだ分からないことが多いです。 ――大隅先生の研究で、「ここがすごい」と思うところはありますか? なんにも分かっていないに近いところから(学問領域を)築き上げられたのはやっぱりすごいと思います。何に着眼して、何を問いにして、どういうアイデアでそれを明らかにするかという点です。 ――大隅先生のインタビューによると、5000株の酵母を当時大学院生だった塚田美樹さんと2人でひたすら顕微鏡観察したとか。 ほんとに、「ここには不思議な解くべき謎がある」という確信をもってないと、そのような実験をしようと思いませんよね。たぐいまれな観察眼とセンスと好奇心をお持ちの先生だと尊敬します。やるとなったらちゃんと(遺伝子を)見つけるところがすごいと思います。 ――久万先生ご自身も研究のモチベーションも「知りたい」という好奇心ですか? 生き物が生きるとはどういうことなのでしょう。オートファジーは生物学の一現象ですが、そこだけでも山ほど謎がありますね。その謎解きに、自分も参加していることがうれしいし、楽しいです。