首都直下地震なら被害額「国家予算9年分」も…能登、阪神で潰えた道路網、水道も対策途上
■倒木や岩、緊急車両の行く手阻む 1年前の元日、最大震度7の激震が厳冬の能登半島を襲った。道路インフラ(基盤)が壊滅し、倒壊家屋の下敷きになった人々を救うため一刻を争う緊急車両の行く手を阻んだ。 「穴を埋めて倒木を切り、大きな岩を重機で(端に)寄せて進んだ」 緊急消防援助隊として石川県で活動した大阪市消防局の特別高度救助隊隊長、田中真也(46)は、道路亀裂や土砂崩れによる交通網寸断の惨状を振り返った。半島縦断移動の要といえる自動車専用道「のと里山海道」や能越自動車道は機能不全に。通行止めは石川県の管轄だけで最大42路線87カ所に広がった。 国は令和3年度以降、国土強靱(きょうじん)化対策を加速させ、災害時の道路機能強化に毎年度2千億円以上の予算を積み増した。目標は緊急車両の通行を1日以内で、一般車の通行は1週間以内で確保すること。高速道などの未整備区間「ミッシングリンク」の解消と暫定2車線区間の4車線化を進めていたが、能登半島では対応が追い付かなかった。 道路を含む土木関連の被害総額は石川県と市町の管轄で計約1兆200億円。近年の県予算の6千億円台を優に上回る。「数年で復旧できるような被害ではない」。県土木部河川課の担当課長、大井秀紀(53)は語る。 ■大都市部での地震、被害甚大に 巨大地震が東京や大阪などの大都市を襲えば、インフラ被害はさらに甚大になる。阪神高速道路の橋脚が横倒しになった30年前の阪神大震災は、インフラ施設被害が総額約2兆2千億円に上った。金額的には被害が広域に及んだ東日本大震災と同規模だ。 政府の中央防災会議は平成25年、道路を含む公共部門の被害額について、今後想定される首都直下地震で最大4兆7千億円と推計する。30年以内に70~80%発生するとされる南海トラフ巨大地震は、内閣府が令和元年に再計算し、最大24兆6千億円とみる。 ただ、安倍晋三政権時代に内閣官房参与を務め、国土強靱化を提言した京都大大学院教授(都市社会工学)の藤井聡(56)は、東日本大震災の復興状況の分析を踏まえ、こう強調する。 「ひとたび巨大地震が起これば、長期的な経済的被害は最大で1千兆円を超える」