【家族のかたち】「結婚は自由にしていい」親からのレールをいきなり外された娘が親と今も仲良くいられる理由は~その2~
母親は子育てに失敗したと謝ってきた
由美子さんは親との仲は悪くなかった。年を重ねるごとに由美子さんは親に反抗する気持ちがなくなり、母親も思った通りに成長していく娘に対して怒る機会は減っていった。その関係が変化したのは、学生時代からの親友の結婚だった。 「母親に親友が結婚することを伝えたら、『あなたにはいい人いないの? 結婚はするものよ』と言われたんです。いたことがないことを素直に伝えると、『どうして?』と。なので、『お母さんが結婚しろって今まで言わなかったから』と素直に伝えたら、母親はショックを受けた顔をしました」 母親は、由美子さんの結婚のために何かをしてくれることはなかった。それだけではなく、謝罪してきたという。 「『干渉しすぎてしまった。今までごめんなさい』と謝罪され、結婚は好きにしていいと言われました。育て方が間違ったというような母の言い方に、私は自分のすべてを否定されたと思いました。ダメな育ち方をしてしまったんだなって。 私の家は兄も独身で孫がいませんでした。だから、結婚は好きにしろと言われたけれど、本心では孫が欲しいのではないかって、孫がいればまた母親が構ってくれるんじゃないかって思って、初めて結婚を自分の目標にしました」 今のままではダメだからという思いから母親には頼らず、親友を頼って結婚相談所に入所。容姿端麗で当時20代だった由美子さんは3か月ほどで相手が見つかり、母親から自由にしろと言われてから1年も経たないうちに結婚を決めた。そして、現在は夫と2人の子どもと生活をしている。夫は年齢が一回り上で子育てにも協力的で相談しながらできているという。母親に構ってもらいたいための結婚、出産だったが、今はそんな気持ちはないとのこと。 「私は自分に自信がないから、私の周りにいてくれる人に相談しないと進めていくことができません。夫や子どもという頼れる存在が増えたことが、母親に構ってほしいという気持ちが減ったことと関係していると思います。母親とは完全に疎遠になってしまったわけではなく、今でも良き相談相手の1人です」 親から何でも指示された人には主体性がないと言われ、短所ばかりに注目されることが多い。しかし、それは協調性が高かったり、自分に与えられたノルマをコツコツと真面目に集中して行えるという長所にもなりうるのだ。 取材・文/ふじのあやこ 情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。
サライ.jp