センバツ2022 決勝 大阪桐蔭、王座奪回 猛打・好投、揺るがず /大阪
第94回センバツ最終日の31日、大阪桐蔭は決勝で、昨夏の甲子園の2回戦で敗れた近江(滋賀)と対戦。強力な打線が4本塁打を含む16安打と躍動して18―1で圧勝し、悲願の日本一に返り咲いた。大阪桐蔭のセンバツ制覇は、春夏連覇を果たした2018年以来4年ぶり4度目。最後の打者を併殺に打ち取ると、18人の選手たちはマウンドに駆け集まり、人さし指を突き上げる「1」サインで喜びをぶつけ合った。生徒やOB、家族らが集結した三塁側アルプス席も歓喜に沸いた。【隈元悠太、平本絢子、山口一朗、山口敬人】 猛打で近江をねじ伏せた。甲子園優勝は春夏合わせて9度目。昨秋の大阪大会から負けなしの20連勝だ。 一回から勝利を予感させる展開だった。先頭打者の伊藤櫂人選手(3年)が敵失で出塁し三塁まで進むと、続く谷口勇人選手(同)が右翼へライナー性の適時打を放って先制。二回にも四球と犠打などで2死二塁とし、前田悠伍投手(2年)の右適時打で2点目を挙げた。 三回には無死一塁で打席に立った松尾汐恩選手(3年)が左ポールに向けて鮮やかな2ラン。準決勝に続く今大会2本目の本塁打だ。父の太志さん(42)は「大会前に息子から『甲子園でホームランを打つ』と言われていた。昨夏敗れた相手に本塁打を打てて本当に良かった」と満面の笑みを見せた。 続いて田井志門選手(3年)もバックスクリーンめがけて本塁打を決めた。滋賀県出身の田井選手は、近江に中学時代に対戦した選手も多いといい、父の輝彦さん(52)は「地元チームと決勝で戦うのはどこか感慨深い。貢献できる一本を打ってくれてうれしい」と話した。 打線はその後も順調に得点を重ねたが、猛打の真骨頂を見せたのは七、八回だ。七回は打者9人の猛攻で4得点。さらに八回には、1死満塁から谷口選手が、相手投手の変化球を捉える。打球は外野席に吸い込まれて満塁本塁打になった。 先発した前田投手は7回を11奪三振1失点の好投。母の由香さん(46)は息子の活躍に「自分の子ではないみたい」と破顔し、「試合が終わったら『お疲れさま』と伝えたい」と話した。八回からは川原嗣貴投手(3年)が登板し、安定した投球で試合を締めくくった。野球部の保護者会長を務める丸山聡一さん(48)は頂点に立ったナインを万感の表情で見つめ、「3年ぶりの春夏連覇を達成してほしい」と喝采を送った。 ◇後輩の快挙 胸熱く ○…「甲子園で自分たちができなかったことをやり遂げてくれてうれしい」。2年前に主将を務め、交流試合を経験した藪井駿之裕さん(19)=写真=は、4年ぶりの快挙にスタンドから拍手を送った。星子天真主将ら3年は、1年の時から見てきた後輩だ。この大会を通じて、技術だけでなく野球に取り組む姿勢にも、試合を重ねる度に成長を感じたという。「『束になって泥臭く』という言葉通りのチームで、全員で勝ちにいっていた。日本一を目指す姿勢は、大阪桐蔭の伝統として受け継がれている」。後輩たちの更なる飛躍に期待を寄せた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇恩師へ届けた快打 田井志門選手(3年) 三回2死走者なし。フルカウントから渾身(こんしん)の力を込めた一振りで6球目を捉えると、打球はバックスクリーンに吸い込まれた。軽やかな足取りでダイヤモンドを駆けると、星子天真主将とハイタッチ。大会16号となる本塁打だった。 昨秋の公式戦15試合の打率は4割6分2厘。今大会は準決勝まで3試合で12打席3安打と振るわなかったが、決勝の大舞台で会心の一打を決めた。「たたいていく意識を持って打席に入っただけ。大きいのを狙ったわけではない」と謙遜しつつも「本塁打になって良かった」と笑みをこぼした。 昨秋、中学時代のシニアチームの恩師である池元富夫さんを病で亡くし、大会前には「池元さんが天国で見て驚くような打撃をしたい」と活躍を誓っていた。アーチを見た母の清美さん(52)は「きっと池元さんが打たせてくれたのだと思う」と拍手で息子の活躍をたたえた。