「脱走に噛みつきも」元Jリーガー・永里源気 重度の知的障がいと自閉スペクトラム症を持つ中学2年の長男との現在
たとえば、登校前にはぼくのところへ靴下を持ってきて指先を入れてあげると自分で履いたり、ご飯のあとは食器を流し台まで持って行けたり。お風呂と歯磨きに関しても、小さいころは動いてくれなくて引きずりながらお風呂場まで連れて行ったり、歯医者でじっとしていられないだろうから虫歯だけは阻止しなきゃと、ふたりがかりで頭と足を押さえつけて歯磨きをしたりしていたんです。でも、今は「やまちゃん、お風呂だよ」と声をかけると自分でお風呂場に歩いていくし、お風呂のあとは歯磨きだとわかっているので、ぼくが歯ブラシを持つと自分でぼくの足の間に頭を乗せて口を開けて待てるようにもなりました。
散髪も、小さいころは押さえつけてカットできていたんですけど、体が大きくなってきてからは本当に大変で。家族全員で大和を押さえながら目の前にiPadを置いて、頭を固定して何とか切っていたんです。でも先日、ついに押さえつけなしで散髪することができました。 買い物のときも、今までは手を離してわーっと行っちゃうことが何度もあったので、連れて行くのが少し億劫になったりもしていたんです。でも、支援学校の校外学習でスーパーに行ったというお話を聞いて「よし!行ってみるか」と思って。大和にかごを持ってもらって手をつなぎながら店内を回ったんですけど、どこにも行くことなく、一緒に歩いてくれました。お菓子売り場で「これ、いつも食べてるじゃん」と言って大和の手を商品のほうに持って行くと、自分で取ってかごに入れていました。一番すごかったのは、会計のときです。レジが結構並んでいて「これ待てるのかな…」と心配したんですけど、会計が終わるまでずっと隣にいてくれて。すごく成長を感じましたね。
── 学校生活の中でも成長を感じた場面はありましたか? 永里さん:小学校1年生から5年生くらいまでの間は、授業参観に行っても椅子に座っていられないし教室を出て行こうとするので、「大丈夫?」と心配になる場面がありました。でも、最近は座って作業するようになっていて。支援学校の先生が本人の成長を見てくれて、適切な支援をしてくれているからだなと感じましたし、鳥取で未就学のころから通っていた早期療育がよかったからこそ、今につながっているんだなということもすごく感じています。