「脱走に噛みつきも」元Jリーガー・永里源気 重度の知的障がいと自閉スペクトラム症を持つ中学2年の長男との現在
── どんなふうに荒れていたのでしょうか? 永里さん:脱走ですね。あるとき、ぼくの父から突然「今、大和が来てるぞ」と連絡が来て、びっくりしたことがありました。自宅から100メートルぐらい離れたぼくの実家に脱走していて、夏場なのに熱いアスファルトの上を裸足で走って行ったみたいで。父も「誰か家に入ってきたなと思ったら、大和だった」と驚いていました。広い道路があるので、事故にあわなくて本当によかったと思いました。
脱走の対策をしているのですが、隙をついてその後も何回か続いて、妻が走って追いかけて行ったこともありました。大和が実家のドアをうまく開けられなくてちょうどほかのところへ行こうとしたときに見つけて、事なきを得ました。今の大和は身長が170センチメートル弱ぐらいあるので、もう対応できるのがぼくだけなんですよね。足も速くなってきているので、追いかけるときは全力疾走です(笑)。 小学校5年生のころは、思春期や反抗期と重なっていたからか、噛みつきがすごい時期がありました。ぼくが抱っこしているときに背中を噛むので、ぼくの背中があざだらけになって。太ももや肩への噛みつきも多かったです。「そこにたまたま柔らかいものがあったから」みたいな感じで噛んでくるときもあれば、野犬のような表情をしていて「お前、もう噛みつく態勢が整ってるじゃん!」みたいな感じのときもありました。
ぼくだけだといいんですけど、大和の妹やお姉ちゃんも何回かやられて、足にあざができたこともあったんです。反応するとおもしろくなってもっとやってしまうと聞いたので、痛くても我慢したり、時には「ダメだよ」と叱ったりもしましたけど、やっぱり噛まないで済む環境を整えたほうがいいなと思って。口元に何かあったほうが落ち着くのかもしれないと考えて、スタイをつけて、噛み噛みチューブのような自閉症のグッズを噛ませてみたこともありました。
■今ではお風呂や歯磨き、散髪もスムーズに ── 脱走や噛みつきなどの時期を経て、現在中学2年生の大和さんの様子を聞かせてください。 永里さん:小学校5年生の終わりごろから、グッと成長しました。朝起きたら支度をして学校とデイサービスに行く、帰宅したら夕飯を食べてお風呂に入って歯磨きをする、午後8時前後に寝室へ行くという流れをずっと継続しているので、1日のルーティンを理解して、見通しをもてるようになりました。