「脱走に噛みつきも」元Jリーガー・永里源気 重度の知的障がいと自閉スペクトラム症を持つ中学2年の長男との現在
そんなふうに、噛みつきがブームだったり、口に入れるのがブームだったりと、そのときどきによって本人のこだわりがあるなかで、唯一小さいころから変わらないのがEテレを見ることなんです。朝、Eテレがついていないとリモコンを持ってきて「テレビをつけろ、つけろ」と表現するんですけど、ほかの子たちはそれぞれ好きな番組があるじゃないですか。そんなときも「録画して、やまちゃんがいないときに見ればいいや」と対応してくれて。障がいについて特には何も伝えていないんですけど、きっとそれぞれが「大和はこういう子なんだ」と認識しているんだと思います。
── きょうだい喧嘩もないですか? 永里さん:全然ないです。でも、5歳の末っ子が遊んでいる指人形を大和が取っちゃったときは「やまちゃん、取らないで!」と言って末っ子が取り返していて。大和が悪いのに、悲しそうに「ふぅ~」と声を出していました(笑)。注意されたり怒られたりするときに、そういう声を出すんですよ。 ── 中学生の男の子には失礼かもしれませんが、かわいいですね。 永里さん:いやいや、失礼じゃないです。めちゃくちゃかわいいです。子どもたちについて、妻とは「自分たちが絶対に先に死ぬから、大和の存在が大和以外の子どもたちの重荷にならないようにしたいよね」という話をしていました。でも、厚木のJC(青年会議所)の方々と一緒にお仕事をする機会があったときに、たまたまお兄さんが障がいを持っているという方がいらっしゃったので、親目線で「障がいを持つ子がほかのきょうだいに迷惑をかけないように環境を整えたい」というような話をしたんです。そしたら、その方から「それは親のエゴです。きょうだいは、障がいを持つきょうだいに対して、迷惑とか嫌な気持ちなんてないですよ」と言われて。なるほど、親とは違ったきょうだい側の目線や思いもあるよねと気づかせてくれた、貴重な機会になりました。