“キラキラネーム”は日本の文化? 好きだったけど…改名に踏み切った子の葛藤
「命名時にはこれがいいと思ったものの、後になって、親戚や周囲から『読みにくいんじゃないか』『将来に差し支えるのではないか』と言われ、考え直すようです。ですので、改名をするのは、出生届を出して間もない方やお子さんが2歳くらいまでの方が多いです」 司法統計によると、改名の申立件数は2022年では5728件、そのうち4146件が認められている。名前は本人にとって唯一のものなのはもちろん、名づける側にとっても一生に何度とあることではない。それだけ悩ましいことでもある。 改名を望む人たちがいる一方、今回の戸籍法改正では、認められない名前をめぐって専門家の間で議論されてきた。
「一般に認められている」の文言が今後の命名に影響?
法務省の「氏名の読み仮名の法制化に関する研究会」のまとめなどによれば、自治体が受理しない読みがなの例がいくつか示されている。 (1)「太郎」と書いて「じろう」と読む (2)「高」と書いて「ひくし」と読む (3)「太郎」と書いて「マイケル」と読む (1)と(2)は、漢字の意味と反対でわかりづらいことなどが理由となっているが、悩ましいのが(3)だ。名前と関連がないというのが理由だが、これは命名者の親の考えと行政担当者の考えに隔たりが出る場合があり得る。
かりに「光宙(ぴかちゅう)」という名前の届出があった際、行政担当者が「関連がない」と判断したり、親側の思いに理解が至らなかったりした場合、拒否される可能性があるということだ。付言しておけば、江戸時代に勘解由小路光宙(かでのこうじ・みつおき)という公卿が実在しており、「光宙」は決して最近の名前でもない。 その意味で、この戸籍法改正は現行の命名の潮流に影響を与える可能性もある。 この法改正に関わる法制審議会・戸籍法部会で委員を務めた国語学の笹原宏之さん(早稲田大学教授)は、部会では氏名の読みをどう制限するかではなく、そもそも制限すべきかどうかについても議論したと振り返る。 「日本の漢字文化は柔軟性や自由度がとても高いのが特徴だからです。中国の文字である漢字を、日本語の中で活用してきたわけですから。その時代の求めるものや社会の動きによって、新しい漢字の読み方が生まれてきた歴史があります。名づけにもその自由さが反映されていて、それが命名の文化にもなっています。現時点の認識で制限すると、名前についてだけ変化を止めてしまう可能性がある。それは文化において危険なことだ。そんな懸念を専門家の立場から根拠を挙げながら主張してきました」