“キラキラネーム”は日本の文化? 好きだったけど…改名に踏み切った子の葛藤
だが、いまの若い世代の名前を見れば、そんな“キラキラ”した名前はけっして珍しいものではなくなっている。 明治安田生命が長らく続けている「生まれ年別の名前調査」で、2022年の女の子の1位は「陽葵」だった。ただし、その読み方は「ひまり、はるき、ひなた、ひな、ひより」など一定ではない。男の子の4位は「颯真」で読み方は「そうま、ふうま」とされる。「そう」は颯の本来の読みのひとつだが、「ふう」は漢字のつくりの「風」からの連想と思われる。このような名前がランキングの上位に入る現在、名づけの変化を若い世代はどのように感じているのだろうか。
神奈川県に住む大学生の千花(ちはる)さん(20)は、自身の名前も読み間違えられることが多いが、初対面のとき話のきっかけになっていいという。「よく考えると、キラキラネームのような変わった名前をつける親はキラキラネームがなかった時代の人ですよね。自分たちの世代にはあまりない名前をつけようと思う人が多いから、名づけが変化するんじゃないかと思います」。 同じく神奈川県に住む大学生の温音(あつと)さん(20)は、「心愛(ここあ)」など上の世代には違和感を持たれそうな名前も「特に問題ない」としたうえで「アニメやマンガのキャラクターに当て字をしたような名前は行き過ぎでは」と語る。「ただ、極端だと感じる当て字の名前に同世代で出会ったことはありません」。 そんな若い世代であっても自らの名前に悩みを抱え、改名に踏み切る人もいる。それが冒頭に紹介した松下星奈さんのようなケースだ。
“キラキラネーム”の改名は親が希望する例が多い
「改名の理由はさまざまです。犯罪歴があるとか、外国人の方と結婚したからその氏に変えるとか、特定の人から逃げるためとか。難読であったり、常識外れだったりする、いわゆるキラキラネームだからというのも数ある理由のうちの一つです」 司法書士事務所エベレスト大阪の所長、堀川貴史さんは改名事情についてそう語る。年間700件以上の氏名変更の相談に応じており、松本さんの改名手続きをサポートしたのも同事務所だ。 改名には家庭裁判所の許可が必要だ。申し立てにあたっては、単なる趣味や感情、信仰上の理由などでは受け付けられず、名前を変更しないと社会生活に支障をきたすなど「正当な事由」が求められる。前出の松本さんの場合、学校や会社などでの長年のトラブルを理由として提出し、1カ月ほどの審判を経て家裁から許可を得るに至った。 堀川さんの経験によれば、いわゆるキラキラネームを理由とする改名は、本人よりも親が希望する例が多いのだという。