「部長、どうか私を管理職にしないでください」出世したくない会社員が激増する3つの理由
メンバーシップ型雇用が馴染んだ日本企業は、マネジャーにいろいろな仕事を押し付けている。責任の範囲が不明確なのが問題だ。たとえば部下というリソースに不足分があるのは、果たしてマネジャーの責任か。本人の責任かもしれないし、採用部門の責任かもしれない。ある企業ではマネジャー職の役割を定義して周知徹底させたことにより、マネジャー以外のメンバーの意識が劇的に変化した。このような例もある。 ■なんでもかんでもマネジャーの仕事ではない
(2)部下育成の責任範囲を明確にする マネジャー職は、部下育成も求められる。しかし責任の範囲はどこまであるのか? 子どもの成績に関する責任でたとえてみよう。 ・学校の先生と同じぐらい? ・予備校の先生と同じぐらい? ・家庭教師と同じぐらい? ・親と同じぐらい? 私の感覚では、親と同じぐらいの責任だ。マネジャーは、学校の先生や予備校の先生のように「教える技術」を専門に学んでいない。自分自身も目標を持っているマネジャーが大半なのだから、親が子どもの勉強を見ていられないのと同じように、マネジャーも部下に付きっきりで教えることなどできない。
職人仕事ならともかく、そうでなければ自分自身で勉強して成長するのが基本だ。しかも小学生や中学生じゃない。社会人になっているのだから、自分の成長は自分で責任を持つのがあたりまえである。このように、責任範囲をしっかりと明確にしよう。そうすることで、確実にマネジャーの心の負担は軽減される。 (3)若者へしっかり啓蒙する 若者たちに当事者意識を持たせることは、とても重要だ。このような啓蒙は、マネジャーに任せてはいけない。場合によっては外部の専門講師などに頼んで定期的に啓蒙するのだ。
1年に1回や2回の啓蒙では、何も残らない。私どもコンサルタントも、粘り強く啓蒙する。若者たちは、ベテラン社員が信じているよりもずっと素直だ。ベテランのマネジャーたちにも、しっかり啓蒙する。 「子離れ」が必要な親と同じように、マネジャーも「部下離れ」が必要だ。「私がいないと、部下は何もできない」などと思い込まないようにすべきだ。背負い込めば背負い込むほど、次世代のマネジャーのなり手がいなくなるからだ。
■粘り強い組織改革からは避けられない このように、出世したくない社員が増えている背景には、マネジャー職の役割の曖昧さ、若手社員の育成の難しさ、不確実性の高い時代における目標達成のプレッシャーなどがある。 最後にワンポイントアドバイスを伝えておく。 それは、特効薬などないということだ。ベンチャー企業ならともかく、歴史のある組織なら環境要因がとても大きい。組織文化を変えるぐらいの気持ちで、粘り強く啓蒙していくことが重要だ。
横山 信弘 :経営コラムニスト