「生理は我慢するものじゃない」――「月経のタブー」を変える企業の取り組み
「生理に関しては、タブーのような状態になっていると思います。苦しんでいる女性も声を上げづらいし、男性もどう声をかけていいのか分からない」。産婦人科医の甲賀かをりさんはそう言う。そんななか、月経痛の診療やピルの処方など、女性特有の健康課題を福利厚生でサポートする企業が出てきている。支援をスタートした企業を取材した。(取材・文:城リユア/Yahoo!ニュース 特集編集部)
生理休暇の取得実績はほぼゼロだった
「福利厚生を見直すきっかけになったのは、商品のリニューアルでした。ニキビケアシリーズの化粧品とニキビに関わりのある生理周期について、どう発信していくか。プロジェクト推進チームには、世の中の生理に関するタブーのような意識を変えたいという思いがありました。アプローチの仕方を考えるなかで、まずは自社の状況を見直すことに思い至り、アンケートをとったのです」 化粧品を扱うオルビス株式会社で福利厚生を担当する藤本かおりさんは、背景をこう説明する。 同社は、2020年6月、従業員を対象に、月経トラブルについて医療機関に相談できる「オンライン診療」のプラットフォームを導入した。これまで生理休暇は無給だったが、月1回までは有給休暇として取得できるように変更。名称を「ウェルネス休暇」に変更し、生理だけではなく、更年期による体調不良や不妊治療の通院にも適用できるようにした。
従業員のうち女性が9割を占めるオルビス。アンケートの結果、70%が「生理や月経前症候群(以下、PMS)が原因で休みたいと思ったことがある」と回答。一方で、77%の人が「生理痛やPMSを理由に会社を休んだことがない」ことも分かった。これまで生理休暇の取得実績はほぼゼロ。休まない理由として、「ギリギリ出社できる体調の悪さだから」「甘えていると思われそう」「女性共通のもので、自分だけ休むのも気がひける」などの声がある。今回、「ウェルネス休暇」の導入後5カ月間で、20人が取得した。 ウェルネス休暇の導入前には、店舗運営の現場から懸念する声もあがった。全国105店舗で働く従業員約800人のうち、大半が女性だ。「1店舗7人ほどでシフトを回しているのに、みんなに月1回ずつ休まれたら店舗運営に支障をきたす」「自分が休んでシフトに穴を開けるのは申し訳ない」といった意見があった。 導入の目的は休むことではなく、ケアをして働きやすい状態を作っていくこと。症状が改善しない場合は、健康管理センターに常駐する看護師に福利厚生担当経由で相談すること。福利厚生担当はこれらを社内に伝えることで、理解を得た。また、オンライン診療のプラットフォームに関しては、コストもかからないものだったので、導入しない理由も見当たらなかったという。診察によって月経痛やPMSを緩和するピルを処方してもらうこともできる。 「生理休暇の取得率を上げようとか、ピルの使用を勧めようとか、そういうつもりで導入しているわけではありません。みんなが働きやすい環境を自律的に作れるように、選択肢を提供する。自分の体のことを理解するきっかけになるといいと思います」