「生理は我慢するものじゃない」――「月経のタブー」を変える企業の取り組み
男女がお互いに理解し合えないブラックボックス
ピルについても、あまり正確な知識が広まっていないと甲賀さんは指摘する。 「一般的にピルといえば排卵を止める避妊薬のことですが、最近ではむしろ本来“副効用”だった避妊以外の目的で飲む女性が多いですね」 低用量ピルを飲んで排卵を止めると、卵巣や子宮を一時的に休めることができる。具体的な副効用は、排卵に伴う排卵痛や、排卵後に出るホルモンによるPMSの緩和。経血の量や痛みが少なくなるので、月経困難症や過多月経なども改善し、子宮内膜症の予防にもつながる。 これらの副効用を目的とした健康保険適用の低用量ピルが日本に登場したのは、2008年のこと。その後は新しいピルがいくつも作られ、処方されたものが自分に合わなくても、違うピルを試せるようになってきた。 「『人工的に生理を止めるなんて』という方もいますが、15歳から50歳まで毎月ずっと生理があるほうが、自然じゃないという見方もあります。低用量ピルで体を休ませるのはいいことだという認識を持ってほしいです」
低用量ピルの処方には産婦人科医の診断が必須だ。もちろん診察の結果、ピルを処方しないこともある。 「ピルの重大な副作用としては血栓症があります。発症率は1000人に1人もいないほど。実は妊娠中のほうが女性ホルモンの関係で血栓症のリスクは高いのです。発症時に早く対処すれば命に関わることは稀なので、副作用が心配だから1錠も飲まないと危惧するほどではありません。ピルを服用して1~2カ月ほどは、人によって吐き気やむくみ、体重の増加、食欲の増進などが起こるケースも。多くの場合、薬に体が慣れてくれば収まってきます」 オンライン診療でピルが手に入ることに慎重な意見もあるが、「信頼できるプラットフォームを使えば、恩恵を受ける女性は多いでしょう」と甲賀さんは言う。 国内最大級の婦人科特化型オンライン診療プラットフォーム「smaluna(以下、スマルナ)」では、医師の診察とピルの処方がオンライン(有料)で受けられ、最短で翌日には自宅のポストにピルが届く。薬剤師や助産師が相談を受け付けるスマルナ医療相談室(無料)も実装し、ユーザーからの相談は1日に平均で500件ほど。大型連休中などは、900件近い相談がある。