「生理は我慢するものじゃない」――「月経のタブー」を変える企業の取り組み
社員からはこんな声も出ていた。 「生理前には一日中眠かったり、倦怠感があるケースもあり、締め切りが近いタスクなどが控えていると、仕事のパフォーマンスが落ちてしまう」 「大事な会議などが控えているときに生理がかぶると、気分的にも憂鬱になる」 「1日目は痛みが強く、おなかや腰をさすりながら勤務することがある。(中略)途中休憩を取りたいが、突発的な途中休憩を入れる人が部内にあまりいないため、勘繰られるのが嫌で言い出しづらい」 同社は2020年10月から、オンライン診療を活用した婦人科受診と、低用量ピルの服薬をサポートする福利厚生制度を開始した。女性社員の比率は、全体の約4割。低用量ピルの服薬が必要な場合は、会社がピルの費用とそれにかかる診察料を負担する。オンライン診療を活用した結果、通院にかかる移動や待ち時間がなくなり、仕事を休まなくても受診できるようになった。かかった費用は人事部に直接申請する仕組みで、所属部署の上長に知られずに利用できるように配慮されている。 この福利厚生を本格始動する前の半年間、社内の希望者15名にアンケートを行った。低用量ピルを実際に服薬した社員からの回答によると、1カ月のうち「生理によって日常生活への影響が出る日数」が、平均3.1日から平均1.15日へと減少した。 「女性社員に向けたサポートのため、男性社員からネガティブな意見が出るのではないかという心配もありました」と語るのは、人事部の鷲頭有沙さん。制度導入前に、希望社員に向けた「女性のカラダの知識講座」を実施した。講師は前出の産婦人科医、甲賀さんだ。
参加した男性社員からは「同僚女性の体調が悪いことに気づいても、どう声をかけてよいか分からなかったので、参加してよかった」「女性の部下、同僚だけでなく、妻や娘のことを考えるきっかけとなった」「『生理がつらい、生活に影響があると感じたら病気と考えてもいい』という話がとても勉強になった」など、ポジティブな感想が集まった。 登壇した甲賀さんは「大半の男性社員が、初めて聞く話にびっくりしていました」と振り返る。 「『生理だから働かなくていい』と気遣うのも差別的だとか、『低用量ピルを飲んで、生産性を下げずに働け』というのもセクハラだとか、いろんな意見があります。男性にとっても、女性の健康課題と働き方の問題はとてもセンシティブです。女性は男性と体の構造が違い、生理が定期的にある。仕組みをきちんと分かったうえで、声をかけたり通院を促したり、必要な時にいたわることが大切だと思います」