「赤ちゃんの背中スイッチ」実は存在しなかった? 夜泣きを減らすとっておきの方法
赤ちゃんが泣きやむだっこのコツ
その《とっておきの方法》とは、どんな方法だと思いますか? ヒントは3枚の写真です。 この猫のお母さんも、ニホンザルのお母さんも、ライオンのお母さんも、その《とっておきの方法》を使っている瞬間の写真です。 夜泣きで泣きやまない時の《とっておきの方法》は、だっこをするだけではなく、《だっこして移動する》という方法です。これを「輸送反応」といいます。 この「輸送反応」は、危険が迫っている時などに哺乳類のお母さんが赤ちゃんを運ぶ時に見られる反応です。 危険が迫って母親が移動を始めると、赤ちゃんは、お母さんの邪魔にならないように体を丸くしたりしながらおとなしくします。人間の赤ちゃんにもこの本能が残っていて、だっこされて移動すると、協力しておとなしくなるというわけです。 でも、ようやく眠った赤ちゃんをベッドに置こうとすると、目を覚ましてしまうことがよくあります。どのくらいよくあるかというと、3回に1回は失敗して(目を覚まして)しまいます。 これは「背中スイッチ」といわれる現象です。赤ちゃんの背中がベッドについた瞬間に目を覚ますので《赤ちゃんの背中にはスイッチがある》という考え方です。 しかし、研究(※1)の結果、実はベッドに背中がつく前の段階で赤ちゃんが反応してしまうことがわかりました。この反応は、だっこされている体(お腹)から赤ちゃんを離した瞬間に起こるのです。
「背中スイッチ」ではなく「おなかスイッチ」だった
「とっておきの方法」をまとめると、こうなります。 《だっこして(できるだけ止まらずに5分くらい)歩く》+《8分程度、だっこしたまま座って待つ》もちろん、その前に「夜泣きを減らす基本セット」が大切です。 それでも夜泣きを起こして、どうしても泣きやまない時には、「だっこして移動」と「おなかスイッチ」のことを思い出してください。 この「おなかスイッチ」の研究結果が発表されたのは2022年9月のことですから、それより前に子育てをされた方は、知らない方が多いと思います。 知り合いに赤ちゃんを育てている方がいらしたら、教えてあげると喜ばれるのではないでしょうか。 (※1)補足:東京工業大学の黒田公美さんが、理化学研究所に所属していた2013年4月に発表した研究成果です。
水野正司