憲法違反の差別「優生手術」を認めてきた国と法律を断罪 最高裁判決
2018年1月、宮城県の佐藤由美さん(仮名)が、優生保護法(1948年制定。96年に母体保護法に改正)により受けた強制不妊手術(優生手術)に対し国家賠償訴訟を提訴。その報道を見て自分の手術も同じと気づいた全国39人の原告が各地で起こした「優生保護法裁判」のうち5件について最高裁判決が7月3日に下された。
「不良な子孫の出生を防止する」ために強制力を使ったり騙したり麻酔を使ったりしてもよいと厚生省(当時)が通知した優生手術は憲法違反だが、当初は除斥期間(不法行為から20年経過すると賠償請求権が消滅)の壁で原告が敗訴していた。ところが22年の大阪・東京両高裁以降は原告勝訴が続いた。にもかかわらず、国は控訴や上告を繰り返してきた。「自分たちが死ぬのを待っているのか」と憤りつつ今年3月の福岡高裁判決を前に逝去した渡邉數美さんを含め、6人の原告が無念の死を迎えた。 最高裁大法廷(戸倉三郎裁判長)は5月29日、大阪・東京・札幌・仙台の各高裁からの上告審につき口頭弁論を開いた。19歳で診断なしに精神病院に入院させられ「あんたみたいなのが増えると困るから」と看護師に言われ手術された北海道の小島喜久夫さんは「幸せになるか不幸になるかは自分で決めること。自分で自分の人生を決めたかった」と涙ながらに訴えた。 こうした原告たちの声や弁護団の主張、そして正義・公平な判決を求める署名運動(優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会=優生連=の呼びかけ)に集まった33万3602筆の思いが最高裁に届くのか。判決当日は酷暑の中での傍聴抽選に約1000人が長蛇の列を作った。 判決は優生手術が憲法13条(自己の意思に反して身体への侵襲を受けない自由)違反だと認定。障害のある人は劣った人と国が扱ったことも同14条1項(法の下の平等)が禁じる差別にあたり優生保護法自体が違憲だとしたうえで、国による除斥期間の主張も著しく正義・公平の理念に反し、権利の乱用として許されないと断じた。