【特集「乗るなら今だ!心昂る、V8エンジン」③】LEXUSとBMW、艶やかなフォルムに華を添える「憧れの心臓」・・・それぞれの流儀に「プレミアム」の頂を見た
完成度の高いスタイルは変えず、中身の熟成には妥協しない
一方のレクサスLCはどうか。 12年にまずはデザインコンセプトとして西海岸のキャルティが北米ショーで世に問うた。ダイナミックで流麗なLF-LCのボディスタイルは瞬く間に世界のクルマ好きから激賞されたが、開発や生産チームの間ではこのカタチを生産に移すことなど不可能だと思われていた。 しかしLFAなきあと、ブランドのフラッグシップへの期待が一層高まっており、トヨタとしてもこのカタチを市販車にできるだけそのまま実現することで、未来へ向けたレクサスの新たな道筋が生まれると確信していた。 その開発を任されたのが後に社長となる佐藤恒治氏だ。LCの市販デビュー直後にじっくり話を聞く機会があったが、当初、GSのシャシを使って試作車を作ってみたところ、LCとは似ても似つかぬ格好悪さで、これではダメだと新規でFRプラットフォームを起こしたと聞いた。 コンセプトカーとほとんど変わらぬ市販モデルを作る。不可能に思われたことを可能にしたこの瞬間こそ、トヨタおよびレクサスのデザインが変わり始めた瞬間でもあった。今日のプリウスやクラウンの成功を導いたのはLCの登場にあったと言っても過言ではないだろう。 デビューから早8年が経ったというのに、いまなおLCのスタイリングが新鮮さを失っていないように見える理由は、もちろんさほど販売量の伸びないクーペであるということにも因るけれど、それにもましてこだわり抜いて実現されたデザインの完成度の高さがあるのだと思う。デビュー以来、ほとんどデザインに手を加えられていないこともまたその裏返しだと言っていい。 先だって何度目かの改良を受けた。LCはデビュー以来、足まわりを中心によく手が入ってきたモデルだ。それだけ当初の走りには不満もあったということ。最新モデルにおいてはついにランフラットタイヤを諦め、見合ったチューニングを施したことで以前とはまるで違う素直なハンドリングと直進安定性をみせるようになった。