なぜヴィッセル神戸のフィンク監督は電撃退任したのか…4年連続監督交代の異常事態の背景にある問題点
今年元日の天皇杯全日本サッカー選手権大会決勝を制し、ヴィッセル神戸に悲願の初タイトルをもたらしたトルステン・フィンク監督(52)の電撃退団が、22日にヴィッセルから発表された。 退団はフィンク監督本人が辞意を申し入れた21日付で、神戸市西区のいぶきの森球技場で22日午後4時から行われた練習前に選手たちへ挨拶。セバスチャン・ハーンヘッドコーチ、モラス雅輝アシスタントコーチ、ニコラ・ヴィドヴィッチフィジカルコーチも同時に契約解除となった。 ホームのノエビアスタジアム神戸にサガン鳥栖を迎える23日の明治安田生命Jリーグ第18節は、マルコス・ビベスアシスタントコーチが暫定的に指揮を執る。しかし、シーズンが折り返した直後の、しかも公式戦を翌日に控えた状況での指揮官の突然の退団に、チーム内には動揺が広がっている。 スイスのバーゼルや独ブンデスリーガのハンブルガーSVなどで指揮を執った、ドイツ出身のフィンク監督は昨年6月に就任。その時点で13位に低迷していたヴィッセルを建て直し、リーグ戦で8位に浮上させるとともに天皇杯でも勝ち進み、元日の決勝で鹿島アントラーズを2-0で撃破した。 期待とともに迎えた今シーズンも、横浜F・マリノスとのFUJI XEROX SUPER CUP2020をPK戦の末に制し、クラブとして初めて臨むAFCチャンピオンズリーグ(ACL)でも連勝発進。グループGの首位に立っている状況で、すべての公式戦が新型コロナウイルスによる長期中断に入った。 7月の再開後は過密日程のなかで選手のやり繰りに苦労し、リーグ戦では19試合を終えて4勝8分け7敗の12位。最近の7試合では4分け3敗とひとつも勝てず、特にホームでは7月18日の清水エスパルス戦でしか勝利していない状況で、ドイツ発の思わぬ報道が今月に入って伝えられた。
今シーズン限りでヴィッセルとの契約が切れるなかで、母国の複数のメディアが「家族などの問題で今シーズンをもって日本を去り、ドイツに戻る意向をもっている」と報じた。直後に行われたオンライン会見で、フィンク監督は「記事だけを見ると、大きな誤りがある」と釈明している。 「家族に長く会えないので寂しいと私は言った。向こうに帰りたいというよりも、家族に会いたいと。新型コロナウイルスの関係で家族の来日は難しいが、この先も神戸に残るのであれば、家族に日本へ引っ越してきてほしい。私は神戸の町が大好きで、クラブの未来像ももっている」 しかし、ヴィッセルを通じて発表された退団コメントで、来シーズン以降の続投にも一時は意欲を見せていたフィンク監督は、前言を翻すかのような言葉を綴っている。 「私は家族の下に戻るという決断をしました。まだリーグ戦でも良い結果を残せると思いますし、アジアチャンピオンズリーグという大きな大会もあるので、今後の幸運を祈ります。遠くから見守るつもりですし(中略)このクラブの監督であったことを誇りに思います」 ヴィッセルがシーズン途中で監督を交代させるのは4年連続となる。昨シーズンもスペイン出身のフアン・マヌエル・リージョ監督が、4月中旬に「私と家族にとってはベストだと思った」と電撃辞任。 リージョ監督の前任者、吉田孝行監督の再登板をへてフィンク監督が就任した経緯がある。 ただ、チームの成績が低迷するたびに監督が代わる流れは、神戸市出身の三木谷浩史氏がクラブの経営権を取得した2004シーズン以降で、特に顕著になっていると言っていい。今シーズンまでの17年間で延べ17人の監督が指揮を執り、途中で監督が交代したシーズンも10度を数えている。