なぜヴィッセル神戸のフィンク監督は電撃退任したのか…4年連続監督交代の異常事態の背景にある問題点
チームの総合力が問われるリーグ戦の最高位は、ブラジル出身のネルシーニョ監督に率いられた2016シーズンの7位。指揮官の人選を含めてチームの強化に一貫性や哲学の類が、もっと言えばフロント上層部の我慢が感じられないがゆえに、常に中途半端な戦い方に終始してきた。 例えば元スペイン代表のレジェンド、司令塔のアンドレス・イニエスタに続いてリージョ監督が招聘された、2018シーズンの後半以降は「バルセロナ化」という言葉が何度も飛び出した。イニエスタの前所属クラブになぞらえた目標は、今シーズンに入ってからはほとんど聞かれていない。 今シーズンを振り返れば、準々決勝から登場したYBCルヴァンカップで川崎フロンターレに大敗。新型コロナウイルスの影響で、リーグ戦の上位2クラブが準決勝から出場する形式に変更された天皇杯の連覇も難しくなった状況で、フィンク監督はリーグ戦に対しても実質的な白旗を上げていた。 「現実的に見れば、リーグ優勝はおそらくないと思ってもいい。なので、ここからはできるだけいい順位でリーグ戦を終えられるようにして、クラブの考えでもある若手の上達に集中していきたい」 故障から復帰したイニエスタが試合終了間際に絶妙のアシストをマークし、劇的なドローにもちこんだ今月12日のFC東京戦後に、指揮官が発したコメントは少なからず波紋を呼んだ。 ただ、27人という小所帯で戦い、夏の移籍市場でも補強がなかった今シーズンで若手を成長させるという目標の変更は、11月中旬から再開される予定のACLでの上位進出をにらんでいたとも受け取れる。 中立地での集中開催が濃厚となるACLは外国人枠が「3」しかなく、ヴィッセルはイニエスタ、DFトーマス・フェルマーレン、FWドウグラスを登録している。DFダンクレーとMFセルジ・サンペールを起用できない分を、新型コロナウイルス禍における特例によってJ2への降格がない今シーズンを逆に生かしながら、日本人選手を成長させて埋める青写真が新たに描かれていた。