「生活者の日常に影響」はこれから? 専門家や事業者が語る「物流の2024年問題」の現状とは
契約更新の条件交渉で「コスト増の価格への転嫁にタイムラグ」
4月に適用された規制の影響について、宮武准教授が「これから」と言うのは、企業間の契約内容は、変更までに一定の期間が必要になるためです。「4月以降の状況を見て、従来の契約条件を見直す場合など、コスト増の価格への転嫁にタイムラグが生じます」と説明。 「少し話がそれますが、宅配便は大口顧客の契約単価が話題になるケース。報道などでは単価だけが注目されますが、実は見えない内訳も重要です。荷主側が一定の仕分けなどまでして渡す場合、配送業者の負担・コストは下げられるため単価を下げられます。もちろん逆のケースでは単価が上がるため、金額だけでは判断できない要素も。そうした作業領域も含めての価格交渉は、時間がかかると思いますね」 企業間契約の性質に加え、宮武准教授は「一般の宅配便利用者による、置き配やコンビニ受け取り活用の拡大などで、再配達の減少が進むかどうか」も、今後の展開に影響があると指摘しました。 また、ヤマト運輸では「コスト上昇など外部環境の変化を踏まえ、法人のお客様については、プライシングの適正化に向けて協議を進めてさせていただいています」と工藤さんは話します。 こうした話を総合すると、価格変更といった影響は利用状況などによって、抑えられる可能性があるといえそうです。
個人の利用者ができる対応は「『賢い受け取り方』を選択する」こと
置き配などの活用で再配達を減らしたほうが、結果的に利用者にもメリットがあるという意識を持つ人は多いでしょう。ちなみに、2023年に「Hint-Pot」とYahoo!ニュースが共同連携企画で行った置き配に関する意識調査では、「あなたは自宅などに不在の際、置き配を利用したいと思いますか?」の問いに、置き配肯定派は計65.6%でした。同様の意識調査は多く、昨今も「置き配利用の意向」について同じくらいの結果が多いようです。 実際の置き配利用率について、ヤマト運輸ではEC向け配送商品「EAZY」での置き配指定率は、サービス開始の2020年度18.4%から2023年度には37.3%に上昇。工藤さんによると、今年6月10日から「EAZY」だけでなく「宅急便」「宅急便コンパクト」にも拡大した置き配サービス(クロネコメンバーズ会員限定)により、置き配指定個数はさらに増えているといいます。 「置き配による一番のメリットは、お客様が一度で荷物を受け取れることです。また、結果的に再配達の減少により、温室効果ガス排出量の削減や、ドライバーの負担軽減にもつながります」と話す工藤さん。一方で、置き配については荷物の盗難や破損といった懸念を持つ人が少なくありません。利用者が拡大するなか、そうした不安要素への対策はあるのでしょうか。