“史上最弱”? バイデン新大統領はアメリカの分断を解消できるのか
トランプが消えてもトランプ的なものは残る
冒頭で述べたようにトランプ氏への支持がいまだ、消えていないことを考えると、トランプ氏が消えてもトランプ的なものは残るのであろう。「反エスタブリッシュ」などトランプの撒いた種はくすぶっていく。 共和党の中ではトランプ氏に取って代わるような求心力がある人物はいまのところ、存在しない。この人気を保っていったとするなら、2024年の大統領選挙に再出馬すればトランプ氏が共和党の予備選を勝ち抜く勝機もあるだろう。年齢的に現在のバイデン氏と同じ78歳となる。 ただ、これについては、現在の2度の弾劾訴追がどうなるかにかかっている。下院での弾劾訴追を受け、今後は上院の弾劾裁判で審議されていくが、トランプ大統領の任期は20日までなので、退任直前に大統領を辞めさせることよりも、暴徒乱入事件の責任と、次の大統領選の出馬の阻止が大きなポイントになる。民主党側としては、バイデン次期政権の閣僚や高官の任命承認などを滞ることなく進めながら、時間をかけて弾劾裁判で共和党側から離脱、離反を引き出していくのが狙いだろう。 弾劾裁判の行方も、バイデン政権とトランプ氏の今後に大きく影響する。まずは弾劾の行方に注視したい。
------------------------------------------ ■前嶋和弘(まえしま・かずひろ) 上智大学総合グローバル学部教授。専門はアメリカ現代政治。上智大学外国語学部英語学科卒業後、ジョージタウン大学大学院政治修士課程修了(MA)、メリーランド大学大学院政治学博士課程修了(Ph.D.)。主要著作は『アメリカ政治とメディア:政治のインフラから政治の主役になるマスメディア』(単著,北樹出版,2011年)、『オバマ後のアメリカ政治:2012年大統領選挙と分断された政治の行方』(共編著,東信堂,2014年)、『現代アメリカ政治とメディア』(共編著,東洋経済新報社,2019年)など