“壊し”続けたトランプ大統領、2018年の政権はどうなるか
2018年1月、アメリカのトランプ大統領は就任2年目を迎えます。昨年1月の就任直後に出したイスラム圏7か国からの入国を制限する大統領令を皮切りに、世界はトランプ大統領の打ち出す政策に振り回されてきました。一方で、昨年の大統領選をめぐる「ロシア疑惑」では、昨秋、トランプ陣営の幹部だったマナフォート氏が起訴されるなど捜査に動きが見られます。秋には中間選挙が控える2018年、トランプ政権はどうなるのか。上智大学の前嶋和弘教授に展望してもらいました。 【写真】強くて実は脆いアメリカ大統領 「弾劾」に必要なプロセスとは?
◇ 今年のアメリカ・トランプ政権はいったいどうなるのか。1年目のような波乱が続くのか。あるいは穏健化していくのか。トランプ政権の2年目を展望する。
「壊し屋」としての自己演出
トランプ大統領は「壊し屋」である。過去1年、トランプ大統領は選挙戦中の数々の公約の実行を進めてきた。ただ、その公約そのものが、これまでのアメリカ政治外交の基準、特に前オバマ政権からの連続性を考えると、破天荒なものばかりだった。 既存の政治を「壊す」ものだった。外交で言えば、TPP(環太平洋経済連携協定)やパリ協定離脱、イスラム教徒を多数含む中東などの国からの入国制限、さらにはエルサレムをイスラエルの首都と認定した。国内的には、年末に立法された大胆な税制改革や、各種の規制緩和を進めた。1つ規制を作ったら2つ減らすという原則を立ち上げ、実行してきた。 日本を含め、海外から見れば、「やりたい放題」に見えたのも事実だが、トランプ大統領は意図的に既存の政治を解体していく「壊し屋」として自分を演出していった。既存の政治のアウトサイダーであることを最大のPR材料として、候補者として勝利し、大統領として執務を続けてきた。
「壊す」ことに対する強い反発
「壊し屋」には大きな反発が伴う。実際、トランプ氏の米国内の支持率は2017年末の各種調査では全体では4割を切るほど低い。 ただ、党派別に見れば話は全く異なる。民主党支持者からのトランプ大統領の支持は1割に満たないが、共和党支持者からは8割を超えるような圧倒的な支持を受けている。「壊すこと」に対する強い賛同の結果である。 大まかに言えば、共和党支持者、民主党支持者、無党派はいずれも、それぞれ国民の約3割を占めており、党派性の違いでトランプ大統領が全く異なって見える状況が続いている。無党派のトランプ大統領の支持率は4割弱と全体の支持率に近い。 そもそも保守派とリベラル派で大きく分かれる政治的分極化が2000年代に入ったG・Wブッシュ政権後半から続いている。ただ、前オバマ大統領の党派的な支持の差が6割程度(もちろんオバマ氏の場合は民主党支持者からの評価が高く、共和党支持者からは低い)だったが、トランプ大統領の場合は7割を超すようになった。 トランプ氏が既存の政治を壊せば壊すほど、国民の3分の1の支持者は喜ぶ。その姿を見て、忌み嫌う層からの反発はさらに強くなる。「壊し屋」であるトランプ大統領はじわじわと国民の分断を広げてきた。