6種類以上の薬を飲んでいる高齢者は要注意! 薬の副作用を「認知症」と間違えられ人生急変の危険も…!
薬の副作用で転倒が40%を超す
東大病院老年病科入院データベースによると(図)、飲んでいる薬の数が6種類以上になると、薬の副作用による薬物有害事象の頻度が5種類までと比べて明らかに多くなるとされています。 また別の調査ではふらついたり、一瞬意識が飛んだりなどして転倒する事例は、飲んでいる薬の数が増えるほど多く発生しており、特に、その数が5種類以上になると、転倒の発生頻度が40%を超すというデータもあるのです。 けれど、高齢者が転倒しても、薬の副作用だという発想にはならず、たいていは「年のせい」ですまされてしまいます。本人も「転んだ」という事実にショックを受けたり、落ちこんで自信を失ったりします。本当は、薬が原因で起こっているかもしれないのに、です。 薬の副作用の影響が歩いているときに起これば、転倒して骨折する可能性があります。足の付け根の部分にあたる大腿骨頸部などを骨折すると、寝たきりになるリスクが高くなります。また、自動車を運転中に、意識がぼんやりする状態になれば、重大な事故につながりかねません。 薬が増えることを多剤併用と言います。「ポリファーマシー」(「Poly」=「多くの」と「Pharmacy」=「調剤」を合わせた造語)とも言い、厚労省は、ポリファーマシーについて、「単に服用する薬剤数が多いのみならず、それに関連して薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下等の問題につながる状態」と定義しています。 簡単に言うと、薬の数が多くなることにともなって、薬の副作用が現れやすくなり、薬の飲み間違えも増え、患者さん自身が治療方法を理解、納得して積極的に治療に参加しようという意志も低下していってしまう、これがポリファーマシーの問題です。
高齢者に出やすい薬の副作用とは
高齢者に多い薬の副作用には「ふらつき・転倒」以外にも、「もの忘れ」「うつ」「せん妄」(意識が混乱した状態)「食欲低下」「便秘」「排尿障害」などがあります。 「もの忘れ」「うつ」「せん妄」などの精神的な症状は、認知症と間違えられ、本来なら不要な薬を処方されたり、周囲から不本意な扱い方をされたりするおそれもあります。 「食欲低下」は、低栄養の状態につながりやすく、体に必要な栄養が不足するために老化が一気に進みます。 「便秘」「排尿障害」は不快な症状なのでQOLの低下を招きます。人によっては、精神的な不安や不穏行動の原因になることも。便秘はトイレでいきむときに血圧の急激な上昇を招くので、トイレで脳卒中を起こす人も少なくありません。 いずれもこれらの副作用は、日常的にありがちな症状であるため、薬のせいで起こっているとは気づかれない場合もあります。